読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

あやかし草子 三島屋変調百物語伍之続 宮部みゆき著 KADOKAWA 2018年

 連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 固く封じ込めたはずのわだかまりが、どこまでも追いかけてくる。一歩を踏みだすために、人は胸につかえる秘事を吐き出し心の重荷をそっと下ろす。
 「語ってしまえば、消えますよ」

 江戸は神田の筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、風変わりな百物語を続けるおちか。
塩断ちが元凶で行き逢い神を呼び込んでしまい、家族が次々と不幸に見舞われる「開けずの間」。
亡者を起こすという“もんも声”を持った女中が、大名家のもの言わぬ姫の付き人になってその理由を突き止める「だんまり姫」。
屋敷の奥に封じられた面の監視役として雇われた女中の告白「面の家」。
百両という破格で写本を請け負った男の数奇な運命が語られる表題作に、三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した椿事「金目の猫」を加えた選りぬき珠玉の全五篇。
人の弱さ苦しさに寄り添い、心の澱を浄め流す極上の物語、シリーズ第一期完結篇!      (帯文より)

 
 第一話 開けずの間
<どんぶり屋>という飯屋の主人 平吉が語る。
実家は金物屋で、平吉は七人兄弟の末っ子。長女が出戻って来た辺りから、様子がおかしくなる。姉は「神様」を家に呼び寄せてしまった。何かを引き換えに願いを叶える「行き逢い神」。長女自身の命と引き換えに嫁ぎ先に取られた息子が戻り、病弱な三男の命と引き換えに、三女は次女の許婚をとりこにした。荒む家庭に、放蕩者だった長男が帰って来て頼りになる所を見せ、結果的に次男が長男を刺してしまう。長男の命を救うため三女の命が差し出され、いよいよ不幸は加速する。残った女将はとある決意を胸に、平吉に「行き逢い神」の元に連れて行くよう頼んだ。

 第二話 だんまり姫
遠州から江戸見物に来た女 せいが語る。
せいは生まれつき化け物を呼び寄せる声質<もんも声>を持っていた。そのため故郷の村に居辛くなり、耳の遠い隠居夫婦に仕えることに、そこから手話のようなものに通じて、お城勤めをすることになった。花兜城に住む姫は、何も悪い所はないのに言葉が喋れない。やがてせいは城で、十ばかりの小さな男の子の亡者と出会う。彼は「一国様」、現藩主の腹違いの兄弟で、幼い頃に謎の死を遂げていた。
一国様が成仏できれば、姫の言葉は戻るかもしれない。せいは、まず一国様が城から出られるようにと、彼が入れる「入れ物」を探し始める。城下では旅一座の人形劇が評判のようだ。

 第三話 面の家
神田川越しの向かいで火事があった日。てんやわんやの三島屋に、ひねこびた小娘が飛び込んで来た。
喋ってしまって厄落としをしたいと手前勝手に主張する。後日、改めて三島屋を訪ねて来た娘お種は、奉公先での体験を語る。「性根の曲がった」所を見込まれ、住み込んだ先には「喋る面」が沢山あったこと、その声はお種にしか聞こえず、面が逃げ出そうとしたら家の者に伝えるよう言われたこと。だがお種は面の声に惑わされ、面を見逃してしまう。

 第四話 あやかし草紙
貸本屋 瓢箪古堂の若旦那 勘一が語る。
まだ勘一が幼かった頃、馴染みの武士栫井が瓢箪古堂に相談に来た。何でも同業者である井泉堂から、写本の内職の依頼が来たという。百両という破格の手間賃、文字だけを追って、決して内容は読まないこと。亡き妻にかかった薬代、娘の養育費にも困っていた栫井はその仕事を受けるが、それが終わった時、栫井は瓢箪古堂に一人娘のことを頼みに来る。「自分の死期を知った」と。
後日、六人の夫と添ったという老女の話を聞いて、おちかは勘一の話の続きを察する。

 第五話 金目の猫
おちかの祝言が近付いて来た。よそに出されている長男 伊一郎も、実家に顔を出す。次男 富次郎と飲みかわし、やがて幼い頃の昔話を始めた。三島屋が店を持った頃、奉公に来ていた二人の女中の思い出、富次郎が拾ってきた猫(らしきもの)がある日いきなりいなくなってしまった顛末について。…


 油断してたら泣きそうになりました。て言うか、職場帰りの電車の中で涙目ですよ、必死で堪えました。第二話ですね、相変わらず宮部さんの書く男の子は健気でいい子。「滅びることを寿がれよう」なんて、でも成仏した訳ではないから、ずっと、なのに。
 「怖い話」のつもりで読んでたからかしら、不意討ち食らいましたね~(笑)。
 今回で百物語はおちかから富次郎に引き継がれます。でも近所に嫁いだ訳だから、出て来ない訳ではないんでしょうね。一冊目に出て来た裸足の商人もちらっと登場、また再登場の機会があるんでしょうか。
 これで27話かぁ、あと73話、本当に続くのかなぁ。