読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

小夜しぐれ みをつくし料理帖  高田郁著 ハルキ文庫 2011年

 『みをつくし』シリーズ5作目。

迷い蟹――浅蜊の御神酒蒸し
 ある日、つる屋を訪れた老女は種市の元妻・お連だった。若い絵師の元に走った上、娘つるまで売り飛ばすような真似をして、挙句自死させてしまったお連を、自責の念も込めて許すことができない種市。お連が語る絵師の現在の居所を聞いてしまった種市は、包丁を懐につる屋を後にする。

夢宵桜――菜の花尽くし
 翁屋から、花見の席の宴の料理を依頼された澪。献立に迷う澪に源斉は、野江に食べて貰いたいものを、とアドバイスする。無事仕事をこなした澪に、翁屋は吉原で見世を出してみないか、と誘いを向けた。

小夜しぐれ――寿ぎ膳
 日本橋伊勢屋の美緒に、縁談が持ち上がった。相手は中番頭の爽助、源斉を慕う美緒は版元の坂本堂の家に逃げ込む。憂さ晴らしにとみんなで出かけた浅草で、澪たちは佐兵衛の姿を見かけ、芳は取り乱して後を追う。澪も、必死の思いでつる屋の名を口にする。佐兵衛が訪ねられるように、と。

嘉祥――ひとくち宝珠
 御前奉行、小野寺数馬は嘉祥に出す菓子のことで悩んでいた。妹・早帆に想い人について探りを入れられながら、考えたのは澪のこと。素朴な澪の連想から、数馬はきな粉の菓子を思いつく。…


 種市の娘・おつるの死の経緯が明らかになった5冊目。
 小松原さまこと小野寺数馬の素性や家族構成も明らかになりました。
 翁屋からの誘いは、あさひ大夫身請けの面から考えても天満一兆庵再建の件から考えても大好機。でも指の怪我の後遺症のこともあり、澪はそれを断ります。…いや、細工だの何だのはもう一人料理人を雇えばいいことでは、とちょっと思ってしまいました。勿体ない、って言ったら勿体ないんだけど、でもお金持ちのための料理、ってのは澪の料理の本質ではないんですよね、きっと。でもそしたらいつまで経っても四千両は稼げないし。…しかし、野江は親友に身請けして貰うことを、果たしてよしとするのかしら。
 源斉先生が澪をほのかに想っていることは、他の人の目から見たら明らかで、澪だけが気がついていない様子。…少女漫画の王道よね、これは(笑)。それにしても、源斉先生が美丈夫だとは知らなかったなぁ。