読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

泣き童子 三島屋変調百物語参之続  宮部みゆき著  文藝春秋  2013年

 『おそろし』『あんじゅう』続編。
 ネタばれになってるかも、すみません;
 
魂取の池
 神田袋物屋三島屋のおちかの元に、本日不思議語りに来たのは器量よしの若い娘・お文(もん)。思い思われる仲の幼なじみとの結婚が決まっているが、どうしても相手の気持ちを試すような真似をしてしまう。やきもち焼きの娘を心配した母親は、郷里の土地神をまつる<鏡池>こと魂取の池の話をする。お文の祖母が悋気故に二度も起こした過ちのことを。

くりから御殿
 白粉問屋「大坂屋」のご隠居長次郎が語る。
 西の漁師町で生まれた育った長次郎は、幼い頃山津波にあって両親も幼なじみも喪った。一人生き残った長次郎は、避難先の網元の別宅で、幼なじみの夢を見る。その度に順々に見つかる仲良しの遺体。先日、心臓の病で倒れた長次郎は、久しぶりに幼なじみたちの夢を見た。

泣き童子
 三島屋を訪ねてきた白髪の痩せ細った男が語る。
 看板屋の店先に捨てられていた男の子・末吉は、三つになっても一言も喋らなかった。ただ、ある使用人が近づいた時だけ火が着いたように泣きわめく。数日後その看板屋が押し込み強盗に襲われ全滅、手引きをしたのがその使用人だと判明する。次に末吉が泣きわめいたのは、家守家業をしていた語り部の男の一粒種の娘に対してだった。娘の罪は回り回って自身の子供に、白髪の男に襲いかかる。

小雪舞う日の怪談語り
 怪談話を心の煤払いとして語り合おう、という怪談語りの会に、聞き役として参加することになったおちか。
 普請道楽の父親が陥った悲劇、異界に通じる橋を渡ってしまった身重の女の話、人の病が見える目を持った母親の話。
 紅袢纏の半吉親分は全身が黒くなって死んでいく元岡っ引きの死に目に立ち会った体験談を語る。
 おちか自身も、その会への往路、両国橋の上で、三島屋に冬奉公に来ている少女への挨拶を聞くという不思議な体験をした。

まぐる笛
 北の地の、まだ年若い武士が語る。
 彼の郷里に出る「まぐる」と呼ばれる化物と、その退治法を伝えられた母親の話を。

節気顔
 夫を亡くしたばかりの女・お末が、放蕩者だった伯父の話を語る。
 お末がまだ幼かった頃。散々道楽を尽くした伯父が、心を入れ替えたと戻って来た。顔を隠して地道に働く伯父の顔が、ある日別人のものになっているのにお末は気付く。二十四節気の日、伯父の顔は近々に死んだ人物に変わり、その人物と所縁のある人を捜して会いに行っている。それは懐かしい、愛しい人だけではなく、怨み辛みに凝り固まった所縁のこともある。ただ、だんだん伯父は影が薄くなっていくようだ。
 伯父をそんな風にした人物の造形を聞いた時、おちかはその人物に思い当る。…


 今回はそれぞれ独立した短編で、それぞれ繋がりはないのかと思ったら、最後の最後で少し過去のエピソードと繋がりましたね。りゅうとした身なりで声のいい、裸足の商人。いずれまた出て来るんでしょうねぇ。
 『まぐる笛』の話が、今朝日新聞で連載中の『荒神』とかなり重なるお話でしたね。これ、元ネタあるのかなぁ。東北、北陸の方でこんな化物、怪物の言い伝えがあるとか。
 怪談話にストレス発散の効果が、ってのは何となく納得しました。何だかんだ言って、みんな怪談話好きですもんね。で、結構すぐ忘れるのよね(笑)。