読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

スキマワラシ 恩田陸著 集英社 2020年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 纐纈散多(こうけつさんた)は自分の名前の由来を知りたいと思っている。でも建築家の両親は散多が幼い頃死んでしまっているし、8歳違いの兄 太郎も聞いていないという。兄は古い建材を扱う古物商で、散多は特定の「物」に呼ばれ、「過去」を見せられる能力がある。
 兄の仕入れにつきあい全国を巡る散多は、とある喫茶店のテーブルに嵌め込まれた古いタイルから、突然「過去」を見せられた。ある時は理髪店のテーブルのタイルから、ある時は雑居ビルの休憩場所の壁画タイルから。そして散多は、そこに両親の姿を見る。
 両親の面影を宿したタイルを求め、兄弟は各地の取り壊し予定の建物を訪ねはじめた。そこに現れる白いワンピースに麦わら帽子、空色の胴乱を下げた女の子。どう考えても現実にいる存在ではない。
 やがて散多たちは、「過去」を見せるタイルの条件に気が付く。おそらく再利用されているもの、元々は関西の安久津川ホテルで使われていたもの。そのタイルが焼かれた窯元は、母の実家と関りがあったようだ。
 そのホテルの一部を移築して作られた古い消防署、その地域で行われる近代アートフェスの出展者 醍醐覇南子に材料を提供したことから、事態は大きく動き始める。
 醍醐覇南子と纐纈兄弟の関係は、都市伝説の少女は何を伝えようとしているのか。…

 面白かった。何なんだこれ、何なんだこれ、って感じでぐんぐん読めました。
 お兄さん、魅力的だなぁ。弟の奇妙な体験を全然否定せず 穏やかに受け止める態度、好き。最初は妙に冷たくて何か隠してるのかとも思ったけど、元々の性格のようで(苦笑;)。
 現実から幻想世界への移行というか見せ方というか、とにかく上手い。連想したのは『千と千尋の神隠し』のラスト近辺、千尋たち一家が草原に戻って来た辺りの風景。いきなり広がる異空間、本当に目の前に広がってくるよう。白いワンピースの少女が駆け回るさまは、萩尾望都作品を思い出しましたね。
 両親の事故は結局防げなかったのねとか、渡された植物の種は何だったのかとか、全てがすっきり解決した訳ではないんですが、まぁいいや(笑)。恩田さんにしては解決した方だよ(笑)。
 やっぱり恩田作品は好きです。