読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

とっぴんぱらりの風太郎 万城目学著 文芸春秋 2013年

 ネタばれあります、すみません;

 時は戦国。
 就職試験に失敗した伊賀忍者風太郎は、京の町に出た。退職金代わりの金銭をただ遊び呆けて使ってしまった風太郎に比べて、同じく伊賀を追い出された黒弓はそれを元手に商売を成功させている様子、見かねて仕事まで紹介してくれた。産寧坂のひょうたん屋までひょうたんを届ける仕事、ただその中に、因心居士なる不思議な老人を納めたひょうたんも交じっていた。以来、風太郎は因心居士に振り回される生活を送ることになる。
 ひょうたん屋を通じて高台寺のねねと知り合い、そこに仕えていた幼馴染の常世と再会と共に、とある公家の若者の祇園祭見物の護衛をすることに。世間知らずも甚だしい巨漢「ひさご様」は、だが妙に憎めない人懐っこさを持っていた。案内係の黒弓も一緒に蹴鞠でもって友好を深めたその帰り、どうやら忍びらしい一行に襲われる。
 命からがら逃げ延びて、しかしねねの部下左門が犠牲になった。世の中は不穏な雰囲気、風太郎も昔の仲間・蝉左右衛門から騙し打ちのようにもう一度伊賀者に呼び戻されて、藤堂家の為に働くことに。真田丸に散々してやられた大坂冬の陣を経て荒んでしまった風太郎に、因心居士は自分を果心居士の元へ連れていけ、と言う。果心居士は三十年も昔、ねねにひょうたんに閉じ込められて、大阪城に祀られていた。
 ねねからも「ひさご様」への届け物を頼まれて、風太郎は黒弓や蝉左右衛門と共に夏の陣真っ只中の大坂城へ向かう。
 因心居士、果心居士の不思議な助力を得てひさご様と再会した風太郎は、そこで忘れ形見を託される。ひさご様の元にいた常世も一行に加わった。赤子を抱いて、風太郎は炎の大坂城からの脱出を試みる。…


 予約本ラッシュが一段落ついて、そう言えば万城目さんのこの作品読んでなかったな、と手に取りました。
 …分厚い。何しろ746頁、約100頁ずつこつこつ読み続ける日々。でも大坂城に入ってからは一気でした。
 なるほど、『プリンセストヨトミ』の前日譚だったのか。
 いやぁ、切ない。戦国時代だから仕方ないんでしょうが、ラスト次々に倒れて行く仲間たちに、思わず目頭が熱くなりました。でも何だろう、どこかで知ってる気がする、と記憶を探って思い出しました。そうそう、映画『二代目はクリスチャン』や『セーラー服と機関銃』『里見八犬伝』でも繰り返されたパターンを、久々に見た感じ。
 ねねの「ひさご様」への思い、会った一瞬で蝉左右衛門の忠心を掴んでしまったひさご様のカリスマ性。…そりゃ家康も危機感抱くわ; 風太郎がひょうたん屋の芥下へこれからを語るシーン、これフラグ立ってるんじゃないかしら、でも万城目作品だよ?と疑いつつ。蝉の自信過剰な危うさ、呑気でマイペースな黒弓にちょっといらいらもしましたが、でも彼らによって助けられた場面も数知れずありましたし。
 赤ちゃんの素性が後世にまで知れている、ということは黒弓は生きてたんでしょうね。この作品だけなら死んでいる、としか思えませんが、『プリンセストヨトミ』まで繋がるなら、黒弓が生きていて伝えたとしか思えない。
 大河ドラマ真田丸』のこともあって、丁度いいタイミングで読んだかもしれません。攻める側から書かれた場面がドラマではどう描かれるのか、それも楽しみです。