読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

オリンピックがやってきた 1964年北国の家族の物語 堀川アサコ著 角川書店 2017年

 1964──昭和39年。東京五輪開催を控え日本中が沸く頃、青森のある町にて。
 田舎では戦争の影がかすかに残る。でも七人家族の前田家は今日も元気。小学生の民子の日常はきらきらしている。待望のカラーテレビに興奮し、学校では「ひょっこりひょうたん島」の話に夢中。まだすべての人が豊かでなく、悲しいこともたくさんある。でも皆が東京五輪を待ち望んでいたあの日、心には希望があった。
                                      (出版社HPより)

 第一話 魔女たちの仕事
おトキは西洋館で、住み込みのお手伝いさんとして働いている。住人は外国人の老婦人(亡命ロシア人との噂有)、裕福に、優雅に暮らす彼女はタロット占いで村の人たちの相談に乗ることも。ある日、知覧からの旅の途中だという青年が訪ねて来た。彼は、家族宛に書いた手紙がどうしても出せないのだとか。老婦人は、代わって自分が届けてあげよう、と提案する。

 第二話 嘆き節
長谷川医院にたむろする老人たち。うちの一人、福士ナヨは、息子の東京転勤に伴って、養老院に入るという。そんな非人道的な事は許せない。前田ツナをはじめとする病院友達は、ナヨの家に押し掛けて抗議する計画を立て、実行に移す。

 第三話 ともだち
前田民子は、クラスのイケてるグループ「タンポポ会」に誘われて有頂天。だが先生には、鼻つまみ者の太田るみ子と仲良くするよう言われてしまった。貧乏で不潔なるみ子に懐かれて、迷惑な民子。だがある日、るみ子の祖父母が交通事故で死亡、るみ子はいきなり父親と東京で暮らすことになった。

 第四話 花瓶とシュークリーム
パンパンの子として産まれたおトキが、西洋館の奥さまに引き取られるまで。

 第五話 ホの字
民子の叔父 前田昭次は新藤ミドリに恋している。ミドリはお見合いマニアで、お見合いを繰り返してはその相談を昭次にしてくる、つまりはまるで脈がない。でも昭次は、デートと言う名の相談会に、半ばのぼせながら付き合う。

 第六話 あした
西洋館に泥棒が入った。通帳や現金や宝石や、とにかく奥さまの全財産が盗まれた。でも奥さまは、一緒にいなくなってしまった黒猫アーニャの方が気になる様子。同じ日、別のアパートでも真珠の首飾りが盗まれていた。何でも駆け落ちして自分の元を去ってしまった妻を、亭主が追いかけて来て、また妻が逃げて、結局亭主がそこに住んでいる…という事情があるらしい。犯人は同一人物なのだろうか。…


 第一話が結構超常的なお話だったのでその路線で行くのかと思いきや、後は現実路線でしたね~。
 東京オリンピックは流石に知らない世代です。この時代ももう、ジャンル分けが「時代小説」になりそうな雰囲気。でもあの頃はよかった、とかはあまり思わないんですけどね、だって今便利だし、清潔だし、価値観も多様になったし。この時代、民子の叔父さんは30代で独身で、もっと肩身は狭かったんじゃないかな。女の人はもっとそうですよね。…と言う訳で、事柄はこの時代を描いてるんだけど、人物は現代に近い価値観を持った人を書いてるんじゃないのかな、とちらっと思った作品でした。