読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

祈りの幕が下りる時 東野圭吾著 講談社 2013年

 加賀刑事のシリーズもの。
 ネタばれあります、すみません;

 小菅にあるアパートの一室から、女性の腐乱死体が見つかった。本来の居住者・越川睦夫は行方不明。被害者女性はおそらく滋賀県在住の独身女性、押谷道子のようだ。面倒見のいい彼女は、有料老人ホーム『有楽園』に居座っている困った老女について、どうも自分の中学時代の同級生の母親に似ている、とその彼女の娘に会いに行ったらしい。娘の名は角倉博美、現在明治座で自身が演出した芝居がかかっている最中だった。博美の母は借金だけを残して行方不明になり、そのせいで身に迫った危険や自殺した父親のこともあって、博美は母親を恨んでいた。
 事件を担当した松宮刑事は、角倉博美と加賀刑事とが以前からの知り合いだったことに驚く。加賀は以前、博美演出の舞台のために、子役に剣術指南を行ったことがあった。加賀は松宮に話を聞くうち、被害者の死んだ部屋に会ったカレンダーにあった書き込みの話を知って血相を変える。それは十年以上前、別れ別れになったまま仙台で死んだ母親の遺品にあった謎のメモと、同じ内容だったから。
 当時、母親と親交が深かったとされる男性・綿部俊一。母が死んだ時、どうやってか加賀の居場所を突き止めて、母親の雇い主に加賀と連絡を取るよう伝えてくれたらしい。遺されたメモはどうやら綿部のものだった。一月『柳橋』、二月『浅草橋』…と一二月まで続く内容は、何を意味しているのか。
 新小岩のホームレス小屋の焼死体、やはり行方不明になっている博美や道子の中学の頃の担任教諭。関係ないと思われた事柄が、地道な捜査で繋がっていく。…


 う~ん、何だろう、ただ単に「名探偵」と言う記号でしか見ていなかった加賀刑事に、だんだん血肉が通っていく感じ。勿論、メインとしてある殺人事件の真相も哀しいんですが。
 角倉博美はやっぱり罰せられなきゃいけないのかな。何十年も前の話だし、大体14歳の女の子に手を出そうとする男とか、誘われたからと言ってうかうかと教え子に手を出す教師とか、ある程度酷い目にあっても仕方ないんじゃないか、と思ってしまう、ってのは既に東野さんの術中にはまってるんでしょうね(苦笑;)。
 何となく、『白夜行』を思い出しました。今回は幼馴染同士ではなく、父と娘の哀しい逃亡劇。やはり陽が当たるのは女性で、陰からそっと支えるのは男性で。
 一気に読めて、面白かったです。