読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ワトソン力 大山誠一郎著 光文社 2020年

 連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 警視庁捜査一課に所属する和戸宋志、彼はそばにいる人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力「ワトソン力」の持ち主だった。ある日いきなり拉致監禁された和戸は、この犯行は自分の能力を利用しようとしている何者かの仕業ではないかと推測し、過去に出会った事件を回想する。

 第一話 赤い十字架
 クリスマス、雪のペンションでオーナーとその妹が殺された。それぞれ各自の部屋の中で、オーナーの死体の傍には血で書かれた十字架らしきものが5本。凶器の銃ベレッタは、5年前に起きた現金輸送車襲撃事件に使われたものとの関連が疑われた。オーナーは襲撃犯だったのか、だとしたら仲間割れが原因か、ダイイング・メッセージらしきものは何を示しているのか。偶然居合わせたSAT勤務の片瀬つぐみを含め、宿泊客の推理合戦が始まった。

 第二話 暗黒室の殺人
 地下二階のギャラリー展示室にて。道路の陥没事故により、和戸は数人の見物客と共に閉じ込められてしまった。停電で真っ暗な中、オブジェ作者が撲殺される。犯人が特定されてしまうこの状況で何故事件が起こったのか、携帯の灯しかないような状態で被害者を特定できたのか。客たちがそれぞれ考えを披露する。

 第三話 求婚者と毒殺者
 日本有数の家電メーカー社長に見初められ、和戸はその娘の婿候補に名を連ねることに。気乗りしないながら訪れた社長の別荘には、他の婿候補も三人集められていた。うち一人がワインに入れられた青酸カリで殺される。だが証言を重ねていくうち、真に狙われていたのは誰かすら怪しくなってくる。最後に真相を見抜いたのは執事だった。

 第四話 雪の日の魔術
 雪の日、建築中の建物の中で射殺死体が見つかった。半地下の部屋の中、スプレー缶を握っていた被害者は、施工主に嫌がらせをしていたらしい。建物の周りに張り巡らされたシートに銃弾が通った痕跡はなく、犯人も部屋の中にいたと思われたが、それにしては足跡がない。犯人はどうやって部屋に出入りしたのか。建物の外から撃った可能性を、施工主は指摘する。

 第五話 雲の上の死
 飛行機の中で発見された死体は、毒薬を注射されたらしい。犯人が特定される密閉空間の中で、何故犯行が行われたのか。同じ機内で起こった宝石窃盗事件との関りは。遺体を検分した医師、キャビンアテンダント、機中警備員が侃々諤々遣り合う中、機長までが犯人当てに参加する。

 第六話 探偵台本
 火事の家から男を救い出した和戸刑事。男は脚本家だったらしく、焼け焦げた書きかけ台本も救出された。見舞いに訪れた劇団員たちが、台本の続きを推理する。孤島での殺人事件、珍しい苗字と被害者が犯人に向かって『姓が変わる』という台詞。このヒントから、犯人は導き出されるのか。

 第七話 不運な犯人
 バスジャックされたバスの中で、刺殺死体が見つかった。凶器のナイフは胸に突き刺さったまま、耳には大音量のイヤホン。犯人はおそらく次の停留所で降りる予定だったのだろう。閉ざされた空間の中の、誰が犯人なのか。バスジャック犯はお構いなく、行く先の変更を運転手に命じる。

 事件を思い起こして、和戸は監禁犯を思い当たった。折も折、和戸は片瀬つぐみによって救出される。片瀬は偶然 監禁場所の近くを通り、推理の冴えを自覚したのだとか。つぐみは和戸との探偵事務所開業を誘う。…

 確か新聞で紹介されていて、気になった一冊。「ワトソン力」を誤解してました、天然系の主人公が何気なく発した質問や言葉がヒントになって犯人が分かるような展開かと勝手に思ってたんですが、本当に単純に推理力を高める設定とは(笑)。
 いいなぁ、これ。バカミスな面も見受けられるけど(←おいおい;)、とにかく楽しい。荒唐無稽が何さ!と力強く思いましたよ(笑)。 犯人が二人共犯、って話は「これありか??」とちょっと戸惑いましたが、それもご愛敬。
 どんな案でも出し合って可能性を消していき、参考にしながら犯行手段を割り出して犯人を見つける。『毒入りチョコレート殺人事件』ですよね、『黒後家蜘蛛の会』じゃなくて。『黒後家~』は探偵役が決まってるから。
 和戸さん、刑事やめちゃうのかな。警察にいた方が社会的に役に立てるとは思うんですが。何だか続編は出そうですね、楽しみです。