読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

64(ロクヨン) 横山秀夫著 文藝春秋 2012年

 2013年国内ミステリベストテン2冠、2016年日本人初の英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞候補作。
 ネタばれあります、すみません;

 主人公は一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。妻は何回か掛かって来た無言電話に一縷の望みをかける状態、三上は娘の捜索のために警務部上層部に借りを作ってしまい、広報官と言いながら、上からの命令を誰何もせずただ垂れ流すに陥っていた。悪しき慣習を改め 信頼を築きかけていた記者クラブとの関係も悪化、交通事故の匿名問題で揉める中、昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件(ロクヨン)への警察庁長官視察が決定される。
 セッティングを命令され、被害者遺族 雨宮への慰問を打診する三上。だが、雨宮は長官の慰問を拒絶する。その理由を探るうち、三上は「幸田メモ」というキーワードに突き当たる。それはロクヨン事件で犯してしまった捜査ミスに関する報告書だった。刑事部長は8代に渡り、ミスを隠蔽していたらしい。
 刑事部からは「元刑事」と揶揄られ猛反発をくらい、記者クラブは長官視察をボイコットすると宣言されてしまう板挟みの状況。刑事部と警務部の全面戦争、その狭間で三上は、長官視察の本当の目的を知る。本当の目的――刑事部長を本庁から出す、叩き上げ最高位を県警から奪う、その宣言。
 折も折、ロクヨン事件をそのままなぞるような誘拐事件が発生する。今更 同一犯の犯行か、模倣犯の仕業か。報道協定を要請しながらも情報を出さない刑事部に、記者クラブは暴動寸前。三上は現場に乗り込み、指揮車に同乗して部下に状況を送る。現場が何かを隠している様子を不審に思いながら。それは、被害者遺族の決死の提示だった。…

 発刊当時、話題になったのは覚えてたんですが、何だかんだ読み損ね、今更ですが読んでみました。
 …面白かった。
 読み始めはどうしようかというくらい辛かったです。不本意で板挟みで、仕事のみならず家庭も問題山積で、しんどくて読み飛ばそうかと思ったほど。何とか状況を改善しようとしてるのに、同期の二渡が先回りしてて相手の警戒心をMAXまで上げてるし。刑事部も警務部も、内部で揉めててもそれを表にまで出すなよ、一般の会社でそれやったら「信用できない」って取引打ち切られても仕方がないぞ;
 三上だけではなく、ミスを犯した日吉も、告白しようとした幸田も、監視役として飼い殺しにされてる柿沼も、誰より誘拐被害者の遺族雨宮も、とにかくやりきれない。…と思ってたら、最後にどんでん返しが来ました。
 そこに繋がるかぁ。村串とか美雲とか、銘川、目崎と変わった名前が続くなぁとは思ってたんですが。同時に、雨宮の努力がとにかく哀しい。警察が当てにできないことは、分かってしまっているし。
 ハッピーエンドではないのかな、三上の娘さんは見つかってないし。母親が芸能人レベルの美人ゆえのコンプレックス、とか胸に痛かったです。奥さんは何とか心に折り合いつけたみたいだけど。
 作者は地方新聞の記者出身でしたよね、警察広報との攻防も迫力満点で、こういう雰囲気なんだろうな、と知らないながらリアリティを感じました。でも個人的には、こんな職場勤めたくないな~、広報も記者も;