読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

アリバイ崩し承ります 大山誠一郎著 実業之日本社 2018年

 連作短編集。

 時を戻すことができました。アリバイは、崩れました――。美谷時計店には、「時計修理承ります」だけでなく「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。「時計にまつわるご依頼は何でも承る」のだという。難事件に頭を悩ませる捜査一課の新米刑事は、アリバイ崩しを依頼する。
 ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ、山荘の時計台で起きた殺人のアリバイ……
 7つの事件や謎に、店主の美谷時乃が挑む。あなたはこの謎を解き明かせるか?       (帯文より)

 第1話 時計屋探偵とストーカーのアリバイ
捜査一課の新米刑事が、時計の電池交換のため偶然入った<美谷時計店>。そこには「アリバイ崩し承ります」の貼り紙が…。刑事は今現在担当している事件を、店主美谷時乃に相談することに。
県立医科大学の女教授が自宅で刺殺された事件、胃の内容物から考えられる犯行時刻には、容疑者の元夫には完璧なアリバイがあった。教授は食事内容をSNSに上げていたので、食べた時間は間違いない。だが、時乃はそれを崩せるという。
 
 第2話 時計屋探偵と凶器のアリバイ
ポストから拳銃が見つかった。その銃が使われたのは製薬会社の社員に対して、大腿部と口腔内を撃たれた死体が自宅のオーディオルームで発見された。容疑者はその上司、モルヒネ横流しを見咎められたらしい。ポストへの投函時間等々から絞り出された犯行時間には、容疑者にはアリバイがある。だが、時乃は一つの可能性を示す。

 第3話 時計屋探偵と死者のアリバイ
交通事故で瀕死の重傷を負った犯人は、新米刑事に自分の犯行を告白して死んだ。果たして交際相手の女性の死体が彼女のマンションで見つかったものの、犯人にそこまで行っている時間はなかった筈だ。犯人はかなり風変わりな推理小説作家だったとか、自分でアリバイを作っていたのだろうか。

 第4話 時計屋探偵と失われたアリバイ
ピアノ教師の死体が自宅のマンションで発見された。容疑者は妹、遺産の相続のことでもめていたらしい。妹はその日に限って18時間も寝ていたとかでアリバイはない。しかも夢遊病者でその日は奇妙な夢を見たという。彼女が犯人とはどうしても思えず、刑事はアリバイ探しのため美谷時計店を訪れる。

 第5話 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ
時乃が先代店主の祖父との思い出を語る。
小学四年生の時、祖父が予告する。店の時計を止める、その時刻のアリバイを作るから見破ってみせろ、と。祖父はその時間の駅前時計との写真を時乃に提示した。時乃は祖父の工作を見破れるのか。

 第6話 時計屋探偵と山荘のアリバイ
休暇中に行ったペンションで殺人事件が起きた。離れの時計台で殺された泊り客の男、雪の上には往復した長靴と片道しかない長靴の足跡があるだけ。たまたま窓から景色を眺めていたために、犯行時刻は制限された。その時間があいていたのは、何と中学生の少年だけだという。彼が犯人とは思えず、刑事は美谷時計店に駆け込む。

 第7話 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ
一人暮らしの老人が殺された。その後、しばらくしてから庭先から白骨死体が発見され、怨恨の動機が浮かび上がった。容疑者は白骨化した死体の息子、だが何しろ事件から数か月経ってしまったので記憶が曖昧だという。漸くその日だけ限定配信された音楽をダウンロードした、その場に友人も居合わせたと証言、だが刑事は違和感を持つ。…


 何と魅力的なタイトル!(笑) 
 この作家さんの作品を読むのは初めてです。と言うか、名前も存じ上げなかったんですが(すみません)、でも図書館の新刊リストにこのタイトル見かけてですね、思わず予約入れてしまいました。…いや、入れずにいられないでしょう??(笑)
 奥付によると作者は京大ミステリ研の出身者だそうで、なるほど、心くすぐられる訳だ。
 面白かったです。こういうのはリアリティがどうのとか言っちゃ駄目ですよね、実行できるかできないか、クイズを解くようにこなしていく。いや、無理でしょそれはやっぱり、と思うのもあったけどそこはそれ(苦笑;)。
 久しぶりに直球を読んだ気がしました。