読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

さざなみの国 勝山海百合 新潮社 2011年

 第23回日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作。
 ネタばれあります、すみません;

 山奥の湖のほとりの小さな集落で、さざなみは育った。十三の年、さざなみはむらを出る。何故なら、むらが滅んでしまったから。全ての源であった湖が濁り、むらに災厄が降りかかる中、さざなみは伯父の勧めに従って、むらに出入りしていた商人について都市へ下りる。頼ったのは父親の家、母の体が悪くなったので別れてしまったが、父の家は元々麓の名家だった。
 旅の途中、老いた名馬と縁があったり、何故か誘拐されかかったりする危機がありながら、さざなみは父の家に辿り着く。父はもう亡くなっていたが、父の妹と母と祖母、つまり叔母と祖母と曾祖母に歓迎されて、さざなみは二年を過ごす。読み書きを覚え、桑折という許婚も得て、迎えられた職は遊馬城。老いた名馬の行方を捜し、引き取っていた姫君・柑橘の引き立てによるものだった。
 その柑橘の縁談が決まった。囂国への輿入れを目前に、柑橘は血の病に罹る。効く薬は象山の奥で採れる希少な薬草と、それでも効かない場合はそこに住むという幻の一族の生肝のみ。その一族の白目や舌は青いとかで、さざなみの舌は青かった。
 さざなみの望みは故郷の湖を元通り甦らせること、心残りは家が途絶えてしまうこと。柑橘と桑折、二人の女性がそれぞれに志を継ぐ。…
 

 久々、というのは何ですが、ファンタジーノベル大賞らしい作品だったなぁ、と思いました。このお話だけで全てが完結する潔さ、私は好き。自分がライトノベルに毒されてるのも感じましたね、さざなみ実はどこかで助かってないか??と暫く疑いながら読んでましたもの(苦笑;)。
 面白かったです。中国史上の実在の国名や書物名が書かれたりしていて虚と実の入り混じり具合が掴み辛かったり、エピソードがあちこち飛んだような印象はあったけど、静謐で物哀しい、美しい物語。…でも、さざなみの覚悟、行為を受け入れることは難しいなぁ。
 結局、彼の望みは叶った訳ですよね。血の繋がりより、思いの継承。でも何となく寂しく思ってるのは、やっぱり私が血族に捕らわれているからなのかなぁ。