読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

絶対服従者(ワーカー) 関俊介著 新潮社 2012年

 第24回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞受賞作品。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 突然変異で高度な知性を備えた昆虫がヒトの代わりに働き、失業者が溢れる満生市で。特に膜翅目、アリやハチは、戦後の高度成長期の土台を支えた。職に就けない鬱憤をぶつけるように書いた槙田修の膜翅目礼賛文章は、新たな職を彼にもたらした。即ち、アリ相手の文筆業。アリの巣の歴史録取。但し、蟲は蟲でしかない。世間が蟲を見る目は冷たい。
 ある日槙田は、一匹のクロオオアリに自分達の巣を見て欲しい、と依頼を受ける。彼が連れて行かれたのはアリの生産工場、あまりにも悲惨な状況で産卵を強要される女王アリたち、それを搾取するヒトの姿の異様さを目にして、彼の怒りに火が着いた。
 槙田は勤め先の社長の協力を得て、録画した映像を公表しようとするが、アリ工場の関係者に追われ、宛のない逃避行をすることに。彼を手助けしたのは一匹のキイロスズメバチ。依然槙田が仕事を受けたことがあるクロオオアリの女王オオヌサが、伝手を辿ってキイロスズメバチの女王に、彼を助けるよう依頼したらしい。
 行きつけの酒場ムネアカオオアリのママ、トラック運転手イエバエのエディ、ヒトに追われて蟲に助けられ、だが社長を盾に取られて、槙田は映像ディスクを引き渡すことを約束する。社長が隠した映像の隠し場所は廃墟となった団地、そこは今ではオオスズメバチの巣となっていた。
 キイロスズメバチと共に決死の闘いから生還、ようやく不正を告発できると安堵したのも束の間、槙田は再びヒトの手に落ちる。待っていたのは働きアリの苦汁を味わう絶望的な労働の日々、彼を救ったのは昔からの親友と、やはり馴染みの蟲たちだった。…


 面白かった。でも私には下手なホラーより怖かったです。蟲に対する嫌悪感というか、小さな同じ形状の物がわさわさいるのを想像するとどうしても背筋に寒気が走りますし、暴力場面というか(この程度でそう言うな、と言われるかもしれませんが)、読んでてまぁ痛いし怖いし。蟲に喰われる、ってそりゃ嫌だよう。なのに頁を捲る手が止まらない。先が気になって、結構一気に読みました。蟲に対する非人道的(?)なエピソードもくらくらしたなぁ。体長10センチほどの羽根の生えたヒト型の生物を連れてる人間、というと見た目は何だかファンタジーなのですが。
 百田尚樹著『風の中のマリア』や児童書の『アリの子ツク』を読んでなかったら感想違ってたかも。あ、『銀魂』でもハチを擬人化したエピソードがありましたね。
 さて、優秀賞がこれだけ面白かったということは、多分大賞は私好みじゃないんだろうなぁ。日本ファンタジーノベル大賞は私には、そういうことが多いから(苦笑;)。