読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

吉田キグルマレナイト☆ 日野俊太郎著 新潮社 2011年

 第23回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞受賞作。
 ネタばれになるのかな、すみません;

 ヒーローショーにて、せっかく貰った大役を腹痛で台無しにしてしまった。舞台は一期一会、子供相手にもう一度は通用しない、と水野葉一はスーツアクターのバイトをクビになってしまう。代わりに紹介されたバイトが『鞍馬からかさ一座』。吉田スタジオパークでのぬいぐるみ劇『西遊記』を公演中で、そのレベルの高さに葉一は舌を巻く。その他大勢の役を務める筈だったのに、主役が腰を痛めたとかで、葉一は何時の間にやら孫悟空の着ぐるみを着ることに。
 作り込まれた舞台の割に打ち合わせは大雑把だった。色々レクチャーは受けたものの、最終的なアドバイスは「悟空の声を聞くこと」。果たして練習や本番中まで、悟空役の役者の細かいダメ出しが続く。思う通りの動きすらできない所がある代わり、普段の自分には到底できない宙返りができたり。葉一の疑惑はやがて先輩連中に肯定される。『鞍馬からかさ一座』のぬいぐるみには意志があり、選ばれた人間にはその声が聞こえるのだと。
 劇団は今、吉田スタジオパークとの契約更新を懸けて岐路に立たされていた。バイトまで集めての公演アイデア募集、葉一がこの時期に『鞍馬からかさ一座』に来たのも巡り合わせだと言う。
 ライバル劇団との大勝負を懸けた大晦日のパレードに、葉一は主役に抜擢された。他の二劇団の力の籠った公演の後、『鞍馬からかさ一座』の全ぬいぐるみを導入した『吉田キグルマレナイト』が始まった。葉一の演じる「葉隠吉田丸」が弾け舞う。…

 基本的に、設定で読ませる話かなぁ。
 最初、ヒーローショーの記述の辺りでは、これがどうしてファンタジーノベルなのかしらと思っていたんですが、ぬいぐるみが喋りはじめて「ああ、なるほど」。ファンタジーでしたね。でもまぁ声の主の察しはついてしまうので、ぬいぐるみの中で演じる高揚感がメイン、って感じ。
 するすると面白くは読んだのですが、何だろう、何か物足りない。ヤマが低いのかなぁ、現象を書いただけのような。…いや、面白かったんですけどね。最後、とんぼをきるカカシにちょっとじぃんとしましたし。
 そうそう、この装丁はどうなんでしょう。表紙の絵がネタばれになってる気がするんですが、これでいいのかなぁ。こそれとも読んでたら自然に気が付くことだろう、ってことなんでしょうかね。