読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

夜行 森見登美彦著 小学館 2016年

 連作短編集、になるのかな。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。

 私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
 十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。
 十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
 夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
 私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
 旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
 「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」                 (紹介文より)


 第一夜 尾道
中井さんが語る。すれ違い始めた妻が、ある日家を出てしまった。尾道の高台にある一軒家に住んでいる、という彼女を訪ねて、中井もまた尾道を訪れる。いざ目当ての家に着くと、そこは廃屋同然で、妻そっくりの、でも「妻ではない」と名乗る女性がいた。夫の束縛に悩まされているという彼女。だが、ホテルマンである夫は別の証言をする。

 第二夜 奥飛騨
武田君が語る。職場の先輩と、その彼女と彼女の妹と四人で飛騨を旅した。道中、彼女は機嫌を損ねて、お世辞にも居心地がいいとは言えない雰囲気、しかも同乗することになった老女・ミシマさんは、四人のうちの二人に「死相」が出ていると言う。

 第三夜 津軽
藤森さんが語る。夫と夫の友人と鉄道旅行に出かけた。青森へ向かう寝台列車の中、夫の友人は「燃え盛る一軒家を見た」と言う。津軽でその家とそっくりの洋館を見つけた「私」は、幼い頃その家に住んでいた友人を思い出す。

 第四夜 天竜峡
田辺さんが語る。伊那市で乗ったローカル線の列車内で、「私」は女子高生と破戒僧に出会う。坊さんは実は、学生時代「岸田サロン」でよく顔を合わせていた人物だった。銅版画家岸田道生を慕って集まっていた「岸田サロン」。彼は闇の中で着想を得て、連作「夜行」を描き、対となる作品集「曙光」の構想も語っていた。

 最終夜 鞍馬
十年ぶりの仲間との再会、「私」大橋は貴船口駅で仲間とはぐれてしまう。電話で連絡を取ると、皆一様に動揺する様子、どうやら大橋は十年前、行方不明になっているらしい。混乱しながらも、大橋は自分がいた世界ではもう逝去している岸田道生と、その妻となっている長谷川さんに会う。岸田は長谷川との出会いを語り始めた。…


 これ、題名は「やこう」と読むのかな、「やぎょう」なのかな。何となく「やぎょう」と読みましたけど。
 怪談というより「怖い話」みたい。オチがあるようなないような、「でその後どうなったんだよ!?」と語っている人に突っ込みたくなるような。だって語ってるその人は、今ここに集まってる訳ですから。
 いつもの洒脱な語り口ではなく、静かにしんしんと話が進み、降り積もっていく感じ。最終話でのどんでん返しには素直に驚きました。で、結局別れる。闇から光へと移行はするけれど。