読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

チヨ子 宮部みゆき著 光文社文庫 2011年

 超常現象を題材にした珠玉のホラー&ファンタジー短編集。

 雪娘
 雪の降る日、卒業した小学校の統廃合を前に、二十年ぶりに卒業生4人が集まった。5人目の少女は、あの日死んでしまったから。やはり雪の降った日、マフラーで首を絞められて。

 オモチャ
 商店街の玩具屋のおじいさんは、クミコの遠縁に当たる人らしい。とは言うものの、今はまるで交流がない。玩具屋のおばあさんが亡くなって、商店街に妙な噂が流れ始めた。曰く、おじいさんがおばあさんを殺したのだとか。無責任な噂話に、マスコミも動いた。変に楽しそうな商店街の人々の様子に、クミコは気分が悪くなる。

 チヨ子
 スーパーのバーゲンセールの一日バイトは、古ぼけたピンクのウサギの着ぐるみに入ることだった。いやいやながら入ってみてびっくり、周りの人がおもちゃに見える。ある人はぬいぐるみのクマに、ある人はバービー人形やリカちゃんに、ガンダムターボレンジャーも。そして鏡に映った自分は、小さい頃大切にしていた白ウサギのチヨ子に見えた。

 いしまくら
 水上公園に、殺された少女の幽霊が出ると言う。被害者はそんな素行の悪い娘じゃなかったのに、面白おかしく噂になっている、という娘・麻子の主張に心動かされ、出版社に勤める石崎は噂の根元を追う調査を手伝うことにする。麻子が噂話を集めたレポートには、実際に幽霊を見た、という証言も載っていた。顔見知りの刑事に意見を訊いてレポートを見せると、刑事の顔色が変わる。やがて、そのレポートは思わぬ形で別の事件解明へと繋がって行く。

 聖痕
 十二年前、虐待に耐えかねて実の母親とその内縁の夫を殺した少年がいた。その少年Aはいつの間にかネットの中で神格化され、<黒き救世主>と呼ばれて、同じように虐待を受けている少年少女たちの拠り所になっていた。実際の少年――柴野和己は医療少年院と鑑別所を出所して、その状態に驚く。悩み苦しむ少年を心配した実の父は、子供専門の調査員にこの件を相談した。調査員は、<黒き救世主>が関わっていると噂されている事件現場に、柴崎和己を連れて行く。…

 大森望氏の解説に作者本人のコメントまでついた、なかなかお得な一冊。
 宮部さんの文章は相変わらず読み易いなぁ。すらすらと読めました。きっと私は白クマのぬいぐるみに見えるだろうな、とか思いながら(笑)。洗濯機で回されてハナが取れてしまったぬいぐるみ、小学生の時、三宮の地下街でワゴンいっぱいに積まれていたのを、一つ一つ見比べて一番器量よしを選んだ思い出の品です。…今思うと、よく母が根気よく待っていてくれたよなぁ(笑)。
 一番印象に残ったのは最後の一編『聖痕』ですね。本人が「『大丈夫かな、宮部さん』って心配されそう」って仰ってたのには笑ってしまいました。よかった、自覚があって(笑)。宮部さんが、どんどん重いテーマの作品に手を広げて行くのが辛いような。無力感は、取材をされていても感じるんでしょうね。
 でも宮部さん、SFやファンタジーは、あまりお上手ではない気がするんですけど。(←こらこら;)