読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

先生と僕 坂木司著 双葉社 2007年

 ミステリマニアの中学生・瀬川隼人に、家庭教師としてスカウトされた怖がりの大学生・伊藤二葉との一年間を描いた連作短編集。

 一話 先生と僕
 伊藤二葉、18歳。S大の理系大学生。人が殺される小説は読めない、極度のこわがり屋。夕闇迫る公園で中学一年生に家庭教師としてスカウトされた。親を安心させるための形ばかりの先生でいい、というませた少年・瀬川隼人はジャニーズ系の美少年でミステリマニア。ある日、参考書を買うために一緒に入った書店で、ギャル系雑誌に貼られた付箋を見つける。
 『おこづかい欲しい子、かけて』の文字と電話番号らしき数字の羅列。試しにかけてみると、古本屋に繋がった。まだ訳の分からない二葉に、「先生」隼人が指令を出す。さっきその付箋の電話番号に電話を掛けていた女子高生に、カマをかけてみろ、と。

 二話 消えた歌声
 五月のある日、友人・山田に昼飯に誘われた。行ったのは古くて狭いビルの中に入ったカラオケ屋。食事は美味しかったものの、安全面に対する不安は拭えない。案の定、ぼやが出て非常階段から逃げ出す羽目に。
 外に出てみると、女子高生二人が妙に不審がっている。もうひと組、女子高生の客がいた筈だと言うのだ。人間消失事件か、と「先生」が身を乗り出す。

 三話 逃げ水のいるプール
 もうすぐ夏休み。区民プールでバイトしている友人からタダ券を貰って、二葉は「先生」を誘って遊びに出掛けた。そこで区役所の人らしき男が、謎の数字をメモっているのを見かける。
 すわ、暗号か?と喜ぶ隼人。数字が何を意味するのか、判った時には犯罪が浮かび上がって来た。

 四話 額縁の裏
 十月、二葉がひょんなことから小さなギャラリーを覘くことに。そこで店番をする女の子に仄かな好意を抱くが、「先生」はどうもそのギャラリーを怪しんでいる様子。ぼくもついて行く、と言い出した。ギャラリーと隣接した自然食品の店に入って「先生」は一芝居うち、そこで見えて来たのは二葉には信じたくない真相だった。

 五話 見えない盗品
 年明け。「先生」はハムスターを飼い始めた。ペット用品を探してネット検索しているうちに、奇妙なスレッドを見つける。何が「入荷」したのか、曖昧な書き方で取引されている様子に興味を持った「先生」は、二葉と一緒にペットショップを回り始める。…

 これはまた、ジャニーズJr.とかHey! Say! JUMPの誰かで夜8時からのドラマになりそうな…。
 当初、二葉くんが実は女だった、とかってオチが着くんじゃないかとか疑いながら読んでいたんですが、そんなことはないようで(笑)。
 黒猫のようにしなやかな「先生」、子供らしい正義感や価値観も主張しながら、日常の謎を解いて行く。それがあまり後味のいいものではないのに、妙に爽やかなのは坂木さんのなせる技でしょうか。メインは謎解きではなくて、二人を取り巻く日々のできごとだったような。
 二葉がせっかく入ったミステリ研の描写があまりなかったのは残念。これはシリーズ化されるのかな。そんな雰囲気はすごくするんですが、坂木さんそう言えば、ひきこもり探偵以外のシリーズってないような…。
 すらすらと読める一冊でした。