読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

仔羊の巣 坂木司著 東京創元社 2003年

 坂木司デビュー2作目。
 ひきこもり探偵・鳥井真一とその友人・坂木司を描いた連作短編集。

 野生のチェシャ・キャット:
 坂木の同僚・佐久間恭子の様子がおかしいらしい。ばりばり仕事をこなしていたかと思えば机の上には同窓会名簿、金欠といいながら懐石弁当を注文し、昨日と同じスーツを着て出社してくる。やはり同僚の吉成哲夫に頼まれて、佐久間の様子を伺う坂木。風邪をひいて寝込んでいる鳥井に代わって、佐久間の行動の謎を解こうとする。
 
 銀河鉄道を待ちながら:
 地下鉄の線路に、何日も連続して風船を持って立っている少年がいる。不思議に思った駅員から相談を受けた坂木が鳥井を連れて理由を推測する。どうやら木村栄三郎に一緒に木工細工を習っている土屋とも関係があるらしい。

 カキの中のサンタクロース:
 坂木が女子高生から嫌がらせを受けている。通りすがりにテニスのラケットを当てられ、すれ違いざまこれ見よがしに悪口を言われる。砂を入れたワイン瓶をぶつけられるに至って、鳥井が激怒した。女子高生を呼び出すべく、坂木に「魔法の言葉」を授ける。…

 佐久間や吉成に自分と鳥井の関係を話す坂木。「障害者の家族を抱えているように思われている」の表現にちょっとどっきりしたり、納得したり。きっと前作発表後、二人の関係を邪推した(…苦笑;)読者に対する作者の抗議なんでしょうね。何だか「ホモじゃない」と主張してる感じ。作中でもそのままの言葉が使われてましたし。いいよ、そんなに無理しなくても、必死で抗弁する方が妄想あおり立てることもあるから。…とか思ってしまいました。私、ひねくれてるなぁ(苦笑;)。
 相変わらず、美味しい料理やお茶、全国の銘菓満載。
 利明くんのお父さんは、自分の体質を子供にも言っておいた方がいいと思うなぁ。高校生にもなった息子に(しかも遺伝してるかもしれないのに;)伝えてないのはかえって良くないような…。
 鳥井の世界との窓口は相変わらず坂木を通じて。これではいけないと思いながら、坂木も歪んだ満足感を感じています。これで満足してしまうと、本当にBLにありそうなシチュエーションになるんですが。本人たちも楽でしょうしね。でもこれでは済まないんだろうな~。