読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

さよならの儀式 宮部みゆき著 河出書房新社 2019年

 

SF短編集。

 

母の法律

虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」。二葉は血の繋がらない姉と兄と両親と充実した生活を送っていたが、咲子ママが悪性新生物に侵されて亡くなってしまい、施設への再鑑を余儀なくされる。ある日、実の親と過ごすより幸せだという二葉たちの言葉を信じない人々が、二葉に近づいて来た。


戦闘員
妻を亡くし、孤独な生活を送る老人。日課の散歩の途中、防犯カメラを叩き落そうとしている子供を見かける。そういえば、この頃防犯カメラを見かける。どこを向いているのか分からないようなカメラを。公園の中にも。


わたしとワタシ
45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。「やっぱり、タイムスリップしちゃってる!」 中学生のワタシは若さゆえに傲慢で、それはわたしには覚えのある視野の狭さだった。


さよならの儀式
長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶。


星に願いを
シングルマザーの母を助ける秋乃。今日も体調を崩した妹 春美を、小学校に迎えに行く。この頃調子の悪い春美、秋乃に対して怯えた態度を取ることも。それは宇宙から飛来した「おともだち」のせいだった。


聖痕
調査事務所を訪れた依頼人の話によれば----ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。当の本人は更生していたというのに。実の母とその交際相手から虐待され、犯罪を強要され、殺されかけて反旗を翻した〈少年A〉。同じ境遇の子供たちの希望、代行者になっていたらしい。悩んだ元〈少年A〉はその現場に赴き、そこに〈黒き救世主〉の姿を見る。


海神の裔
明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。軍から脱走した屍者は匿ってくれた村に感謝し、崩れた磯の漁場を元に戻してくれるという。(伊藤計劃屍者の帝国』スピンオフ作品)

 

保安官の明日
〈ザ・タウン〉にて、誘拐事件が発生。明日はトニの結婚式だというのに。保安官はどうやら事態を把握しているようだ、それもその筈、これで10回目だ。八百二十二体の〈帰還者〉の住む町の正体とは。…

 

 SFというジャンルが、悲観的な、悲劇的な未来を描くものになったのはいつからだったろう。勿論、明るいシチュエーションコメディ的な作品もあるんだけど、『私を月まで連れてって!』とか『ドラえもん』だってそうだし。それにしたってどの作品も、警鐘を鳴らす、と言った意味合いを含んだりしているような気はする。それにしても、『母の法律』や『聖痕』は視点が独特、ミヤベさんならではだと思う。

 そうそう、『戦闘員』で重要なアイテムになる防犯カメラ、「コインパーキングにはほぼ確実に設置してある」の一行には首をすくめました。私、通勤途中で近道するために駐車場ナナメに突っ切ったりしてるんだけど、あれも「見られてるのかな(苦笑;)。

 『屍者の帝国』の世界観を基にした『海神の裔』、ああいういわゆる二次創作みたいなのは昔からあったのかな、それとも同人誌とかのパロディ文化が発展したものなんだろうか。

 血縁によらない、信じない、それとは違う繋がり、結びつき。宮部さんの価値観なんだろうか。面白かったです。