読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

深追い 横山秀夫著 実業之日本社 2002年

 三ツ鐘警察署を舞台にした連作短編集。

 深追い
 ゆうべ交通事故で死んだ男は、高校の時つき合っていた彼女の夫だった。交通課の秋葉は夫の遺品ポケベルを届けに葬儀に出向く。あわよくばという思いが捨てきれないまま渡しそびれたポケベルに、彼女のメッセージが届く。
 「コンヤハシチューデス」
 …彼女は何故メッセージを送り続けるのか。

 又聞き
 鑑識係の三枝は、幼い頃海で溺れて助けてもらった過去を持っていた。身代わりに死んだ大学生に引け目を感じ、毎年命日にはその家を訪ねて思い出を聞く。今年もアルバムを捲るうち三枝は、被疑者写真として使われたものが、その事故のつい一時間前に撮られたものだと気付く。大学生と一緒に海水浴に来ていた友人とガールフレンドは、あの混乱の中フィルムを現像に出していたのだろうか。

 引き継ぎ
 刑事課盗犯係は『既届盗犯等検挙推進月間』中。親子二代で刑事の職に就いた尾花は、前科三犯の野々村を追っていた。同僚の有坂も彼を狙っているらしい。ある日、かつて父親も追っていた「宵空きの岩政」と同じ手口窃盗事件が起きる。引退した筈の岩政は復活したのか。

 訳あり
 警務課では、エリートコースから外れた滝沢が、定年した刑事の復職先に手こずっていた。そんな中、県警本部の同期から、キャリア組のおぼっちゃんが悪い女に引っかかっているらしい、と情報が入る。調べてくれれば悪いようにしないとの言葉に、滝沢の心が揺らぐ。

 締め出し
 生活安全課の三田村は、夏祭りの夜を騒がせた不良グループ「イエロー」の聴取をしていた。同時に入って来た強盗殺人事件の一報に、「イエロー」の面々が動揺したことに不審を抱く。彼らは犯人に心当たりがあるのではないか。現場付近にいた警察OBの老人の、不明瞭な証言の内容に気付いた時、彼の目の前に現れたのは、中学時代のトラウマの相手、かつての不良少年だった。

 仕返し
 警察署次長・的場は、自身の子供のいじめ問題に頭を悩ませていた。中学入試も考えていた夏、署内で馴染みのホームレス老人が死体で発見される。解剖の結果も自然死で問題なし、と思われたが、現場の証言や様子から、警察内での隠蔽工作の疑いが湧きあがって来る。

 人ごと
 会計課の西脇はガーデニングに詳しい。落し物にあった小銭入れに、行きつけの花屋の会員証を見つけ、相手を訪ねて行く。落とし主・多々良巌は娘三人の資産争いに嫌気がさし、今は土地を売ったその金で高級マンションの最上階に一人暮らししていると言う。市内何処からも見える花に囲まれたその部屋で、西脇は多々良の無言のメッセージを感じ取る。…

 予約待ちの本の繋ぎ感覚で借りたのですが、いや~読み易かった。
 この頃読み難い本ばかり読んでたのかしら、いやそんなことないんだけど、何か久々にするする気持ちよく読めた感じでした。
 自分に何の関係もない(笑)世界に浸って読める、ってのはやっぱりいいなぁ。後味が多少悪くても、ちゃんと明日に繋がってる感じのラストで、何だか前向きに楽しめました。横山作品、ハズレないな~。