読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

深泥丘奇談・続 綾辻行人著 メディアファクトリー 2011年

 京都(いや、Q都か?・笑)の深泥丘(みどろがおか)を舞台に、病弱な本格推理作家が体験した不思議を描いた短編集第二弾。

 『鈴』
 散歩の途中で見つけた廃神社で、鈴が鳴る音を聞いた。妻はこの近辺に廃神社の心当たりはないと言う。風が吹いたか、猿の仕業か。三度迷い込んだ神社で、「私」はまた鈴の鳴る音を聞く。辺りには誰もいないのに。

 『コネコメガニ』
 お向かいの森月夫妻と外食した。店は一文字町の<かに安楽>、実は幼い頃の「がん汁」のトラウマから、「私」は甲殻類が苦手である。なのに妻も森月夫妻も、特産物のコネコメガニを生きたまま食べている。不穏な想像に駆られてパニックに陥りかけていた「私」を、妻が一蹴した理屈は…。

 『狂い桜』
 三月に入ったばかりなのに、ソメイヨシノが満開である。小学校の同窓会に出席した「私」は、席を外した人物を「死んだもの」として噂する友人たちに戸惑う。

 『心の闇』
 検査で肝臓に<心の闇>が見つかった。手術で除去可能という医師の言葉に従ってみると、術後は近年にない爽快感。医師は取り除いた<心の闇>を持って来た。患者本人に保管して貰う決まりなのだとか。

 『ホはホラー映画のホ』
 黒鷺署の刑事である「私」と警察医である石倉医師が出会ったのは、とある連続殺人事件。立ったまま槍で貫かれた死体と現場に残された「D」の文字、コイル状に巻かれた針金で身動きが取れないまま刺殺された死体と「E」の文字、大穴の空いたベッドと切り刻まれた惨殺死体に「F」の文字、ドアの破片で潰された目玉に引きちぎられた膝、引きずり出されたはらわたに「Z」の文字。どうやらホラー映画に見立てる殺人鬼が出没しているらしい。そして今目の前にあるのは叩き割られた頭にかぶせられた白いホッケーマスクの死体。だが、例の署名が見つからない。何故なら…。

 『深泥丘三地蔵』
 地蔵盆の頃。昔はこの辺りに、深泥丘三地蔵があったらしい。一つめのお地蔵様はどこかになくなってしまったが、二つめ、三つめのお地蔵様はすぐにお参りできる。一つめのお地蔵様の眼が開くのを見ると、気が触れてしまうという言い伝えがあるのだとか。


      そうそう、地蔵盆って関西のみの風習なんですってね、全国規模のものだと思ってました。
      ほら、夏祭りみたいな感じで。
 

 『ソウ』
 黒鷺署の刑事である「私」と警察医である石倉医師が出会ったのは、とある飛び降り死体。自殺かと思われたが、遺体の様子が不自然である。まるで何者かに攻撃されたかのように内臓は破裂し、「ソウ」の血文字が残されていた。続いて起きた事件、家ごと破壊された死体はジグソーパズルの一片を握っており、夜の公園で爆竹を鳴らしていた傍迷惑な若者たちも今際の際に「そ……う……」の言葉を残した。それぞれのダイイングメッセージの意味は何か。

      
      これ、バカミスでしょう?(笑)


 『切断』
 深泥森神社の境内で、バラバラ死体が発見された。犯人は死体を50回数えながら切断して、50個のパーツを作り、焼き払おうとしていた所を見つかったのだとか。頭に響く声に従って行動したと語る犯人。遺体の鑑定のため、DNA鑑定が行われているらしい。

      「50個のパーツに切り分けるために50回切断した」の記述に、「あ~、綾辻さん間違ってる~」とか
      思ってたら、伏線だった訳ですね;
      なめてました、ごめんなさい;



 『夜蠢く』
 猫がじっと見ているのは、電燈の笠の中に迷い込んだ大ムカデらしい。ところが妻は、そんな影は見えないと言う。石倉医師は、それはムカデの幽霊ではないかと言い出す。

 『ラジオ塔』
 昭和初期、街頭テレビのような役割で作られたラジオ塔が、深泥丘第二公園に残っているらしい。子供たちはその周りでくすくすと笑っているし、老人たちは泣いている。その人たちにだけ聞こえる何かが流れているのだろうか。石倉医師は何故か口をつぐむ。…


 楽しく読みました。ホラーテイストなのにあまり怖くないのは何故?(笑) いや、カニへの妄想とかちょっと笑っちゃったし、ムカデの件とかは怖いというより「いや~、触りたくないよう;」って言う嫌悪感だし。私はきっとあのムカデは放っておくなぁ、死んだ頃を見計らうなぁ。だって逃げられたらその方が嫌だもの; <心の闇>は私もあるなら取って欲しいかも。だって心晴れ晴れするんでしょう?(笑) 
 とにかく、祖父江さんの装丁が見事な一冊でした。ページ捲る度に違うイラストが入ってたり二色刷りだったり、凄いよこれ。凝ってるなぁ、と感心しきりでした。…いや、ちゃんと話も面白かったんですけど。