読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

生きてるだけで、愛。 本谷有希子著 新潮社 2006年

 第135回芥川賞候補作品。

 板垣寧子はメンヘルで過眠症で躁鬱の、25歳の女。今日も雨が降って起きられない。
 三角関係のもつれに巻き込まれて一か月でバイトを辞めて、それ以来同棲相手・津奈木景のアパートに引き籠ったまま。鬱を引きずって津奈木に理不尽に当たり散らすが、津奈木は触らぬ神にと言わんばかりに受け流し、それがますます苛立ちに変わる。
 ある日、家に津奈木の元カノと名乗る女が現れた。自分が彼と元の莢におさまるには、ずるずると同棲を続けている寧子が邪魔だとかで、散々寧子を罵倒した挙句、寧子をイタリアンレストランのバイトにねじ込んだ。
 元ヤンの気さくな夫婦、アットホームな雰囲気。従業員みんな寧子を暖かく迎えてくれて、ここなら続けられるかも、普通の生活が送れるようになるかも、と期待したのも束の間。寧子は雪の降る中、アパートの屋上で全裸で津奈木を待つ破目になる。…

 その他、短編『あの明け方の』収録。

 …この女の人、美人なんだろうな。
 何カ所かそういう記述がありましたが、それが出て来る前からそう思ってました。文章一人称で、著者の写真を見たことがある、ってのも影響してるかもしれませんが、でもね。美人じゃない人がこんな行動とったら、世間からの視線がこんなに甘い筈がない。…ああ、僻み根性入ってるな(苦笑;)。
 で、この女の人もそれを当たり前のこととして受け取ってるんですよね。自分では意識してないかもしれないけど、ちゃんとその上にあぐらかいてる。バイト先でデートに誘われて思ったのが「こんなさえないやつにすらなんとかなるかもと思われてるんだ」だもんなぁ。自分の不安定さを考えたら声かけてくる男の方が奇特なのに、あくまで自分を上に思う、ということはそれを上回る価値が自分にあるということで、端的にいうと美人ってことなんでしょう。
 きっと本人は辛いんでしょう。でも他人には理解されない。私も許容できないな、だってずるいもん。これが許される世の中なら、真面目に働く私は何なのさ。まぁ彼女を羨ましいとも思わないけど。
 …何だか自分の心の狭さを自覚する作品でした。