読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ヴァン・ショーをあなたに 近藤史恵著 東京創元社 2008年

 下町のフレンチレストランを舞台にした、連作短編集のシリーズ2冊目。

 錆びないスキレット
 近所に住む田上夫妻は中学生の息子が夕食時家にいない時、フレンチを楽しみに〈パ・マル〉へやってくる。旦那さんは、専門のぶ厚いフライパン・スキレットまで揃えた素人シェフ、しかし何度も錆びさせてしまうらしい。行方不明になった飼い猫と絡めて、三舟シェフはその謎を解く。

 憂さばらしのピストゥ
 予約のお客はベジタリアンだった。乳製品も砂糖も食べないという女性客二人連れは、でも宗教上の理由でも健康上の理由でもなく、単に流行に流されているだけのよう。行きつけの店でも色々工夫して貰っているとか、特に美味しかったのが伝統的なスープ・ド・ピストゥだと聞いて、シェフの顔色が変わる。

    …これは誠意の問題だなぁ。シェフの世界だけでなく、きっとどの業界でもあることでしょう。
    でも基本的に、フランス料理はカロリーの高さを楽しむものですよね。

 ブーランジュリーのメロンパン
 〈パ・マル〉のオーナーが、本格的なフランスパンの店を出すと言い出した。併設するカフェのメニューを考えてやってくれ、と女性パン職人二人を紹介する。裏にある昔ながらのパン屋さんが店を閉めた矢先、そのうち一人が姿をくらませた。シェフは彼女の行方を知っている人に心当たりがある、と言う。

    …スープ・ド・ブーランジェ、絶対美味しいよ!! これはやってみたいなぁ。
    でもごめんなさい、私はハードタイプのパンよりもちもちしたパンの方が好きです;
 
 マドモワゼル・ブイヤベースにご用心
 いつもブイヤベースを頼む女性常連客・新城さんが、男性連れで現れた。実は彼女は他店のシェフで、ブイヤベースの味を盗みに来ていたらしい。自分の作ったブイヤベースにアドバイスが欲しい、と言う依頼に快く応じるシェフ。だが彼女が持ってきたのはスープ・ド・ポアソンで、それがシェフの失恋を決定着けた。

    …いや新城さん、この男はやめといた方がいいんじゃないかしら;

 氷姫
 友人の妹・杏子に恋をした。リストカット癖があり、かき氷が好きな彼女。彼女の幸せを願っていい相談役に徹してきたが、結婚まで決まった男が傷害事件を起こしたのを切っ掛けに、恋人の地位を獲得した。出所して来ても彼女と会わせるつもりはない。なのに、男の家にあった忘れ物が、彼の存在を彼女に思い起こさせてしまった。

 天空の泉
 フランス、コルド・シュル・シエルにある旅先のレストランで、「私」は日本人の男と同席になった。『星の王子さま』を手に、恋人の話をしながら、トリュフのオムレツに舌鼓を打つ。恋人が『星の王子さま』に込めた想いを探る「私」を、その日本人はさらりと見抜く。

    …これは読み終えてからもう一度ページを繰りました。…ちょと分かりにくかったんですが、
    どちらも「彼女」だったと言うことですかね??

 ヴァン・ショーをあなたに
 フランス、ストラスブールユースホステルで風邪をひいた「ぼく」に、同室になった日本人が味噌汁を作ってくれた。ユースのスタッフの女の子・ルウルウは、フランス人なら風邪をひいたらヴァン・ショーだ、と言う。特にミリアムおばあちゃんのヴァン・ショーは絶品なのだとか。ところが噂のおばあちゃんは、娘婿がヴァン・ショーを嫌ったと言う理由から、もうヴァン・ショーは作らないと言う。同室の日本人は、その娘婿の本当の気持ちを推測する。…

 いいなぁ、どれも美味しそうだなぁ。
 謎解きに関してはちょっと苦しかったり「いや分かるだろ」もあったんですが、でもこれはきっと書かれてる料理を楽しむ作品ですよね。
 語り手である「ぼく」を始めとするスタッフ陣の背景は相変わらず描かれないんですね、でもシェフの青春時代は少し書かれました。実らなかった恋模様も(笑)。
 するする読めて楽しかったです。明日はフレンチトースト食べよう(←おいおい;)。