読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

タソガレ 沢村凛著 講談社 2010年

 いわゆる「何でも屋」に勤めるぼく・寺尾祐児と、その彼女・大江里美にまつわる連作短編集。
 ネタばれになってるな、すみません;

 ある日、彼女の部屋で
 「どこにいても、誰といても、ぴったりじゃない。どこかで私はずれている」
 …僕の彼女はある日、ぼくにそう言った。

 恩知らずな彼女
 つきあいはじめて四カ月。ぼくと彼女はフランス旅行をした。成田空港で出会った老婦人と、地下鉄の改札やオランジュリー美術館で再会したぼくは、彼女の不義理な態度に腹を立てる。ぼくは彼女を問い詰め、彼女はぼくに、すぐには信じられないような告白をし、そしてその老婦人の行動の不自然さを指摘する。それを受けて、ぼくは偶然この場で二度も彼女と出会った従兄弟について、色々な可能性を繰り広げる。

 憶測の彼方に
 ぼくは彼女の親友・梨李香を紹介された。梨李香の美貌と、不愉快になるほど積極的な態度に驚くぼく。その後、仕事で軽井沢に出張している最中に、里美から自分がストーカーにあっているような気がする、と報告がある。心配になったぼくは梨李香に連絡を取り、彼女をつけてみてくれと依頼する。

 チャンスの後ろ髪
 今まで詐欺商売で暮らして来た男がいた。まとまった金がほしい、これを最後にして故郷に帰りたい、そう思っていた矢先に、とある金持ちの家に一億円の現金があるという情報が入る。その家の娘を誘拐して身代金を盗ろう、幸いその娘とは面識がある、怪しまれず彼女を誘拐できるだろう。いざ実行のその時、男は見覚えのある女と再会してしまう。彼女はかつて自分が結婚相談所の入会金詐欺を働こうとしたその現場に居合わせ、コンビニで免許証をコピーしていた時にも出くわした女だった。

 テストの顛末
 祐児が里美をテストすると言い出した。きっかけは里美の不用意な一言から。グリークラブの面々の中から祐児を探し出すと言うもので、里美はカンニングをしようと梨李香に連絡を取る。祐児の態度に腹が立った梨李香は文句を言うため、祐児を呼び出す。それは里美に、誤解を抱かせるには十分な状況であることは、過去の出来事から分かっていた筈なのに。

 別の日、彼女の部屋で
 「何でも屋」の謝礼で、石材アートを貰えることになったぼく。ぼくは彼女のメモ書きをふと思い出し、その言葉を刻んで貰う。…

 今から本当にネタばれしますからね。…とか言っても、新聞の紹介記事で堂々と載ってるの見かけたんで、本当のネタばれではない気はするんですが。
 相貌失認症(人の顔が覚えられない)の彼女を題材にしています。初対面の人はおろか、自分の親や兄弟、多分子供の顔も区別して認識できない。その人の持つ雰囲気や状況で判断するのみ。例として佐々木倫子の漫画『忘却の魔術師』が出て来ますが、…う~ん、すっかり忘れてるなぁ; 今度ブックオフ古本市場に寄って読んでこよう(←こらこら;)。
 あの作品はコメディとして扱っていた覚えがあるんですが、これは考えたら恐怖だなぁ。就ける職種が本当、限られて来るだろうし、確かに理解もされにくいし。でもこの彼女は理解者を親友と恋人、二人も得られた訳で、よかったですね。またそれ故に外見にとらわれない人の見方もできるよう。
 そうそう、彼女の外見のイメージ、何となくいとうあさこさんを連想しました。