読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”と月花を孕く水妖(ウンディーネ) 野村美月著 ファミ通文庫 2008年

 “文学少女”シリーズ6冊目にして番外編。夏休み、姫倉麻貴の別荘での出来事。
 ネタばれあります、すみません;

 『悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください』――遠子先輩からの押し花電報の招待状と、麻貴先輩のお目付役・高見沢さんのお迎えで、北陸の山奥に連れて来られてしまった「僕」井上心葉。姫倉の別荘で心葉を出迎えた使用人たちは、何故か心葉を見て怯える。麓の小さな観光地でその理由が漸く分かった。姫倉の別荘では80年前大量殺人事件が起こり、以来幽霊屋敷の呼び名も高く、未だに様々な怪異現象に見舞われているらしい。
 姫倉の家に伝わる巫女伝説、封印された妖怪がいると言う池、80年前本家から追い出され、屋敷に幽閉されていた少女・ゆり。泉鏡花の小説を自分と重ねていた彼女は、『夜叉ヶ池』のヒロインと同じように、屋敷を訪ねてきた青年に恋をする。ゆりの残した日記からは、その恋が結ばれることなく終わったこと、恋した相手は海外へ去り、ゆりの心が壊れて行ったことなどが読み取れる。そして起こった惨劇。封印されていた妖怪が放たれて起こったと言う世間の噂を、麻貴は鼻先でせせら笑う。
 屋敷の一室に魚の死体がばら撒かれ、その血の混じった池水が麻貴をずぶぬれにした。それでも麻貴はめげることなく、姫倉の名から解放されろと言わんばかり、屋敷を取り壊すことに決めたと言う。心葉は何者かに拉致され、屋敷から連れ出される。夜、土砂降りの雨の中、山中の屋敷に戻る心葉。彼を探しに来た遠子と共に辿り着いた屋敷では、また惨劇が繰り返されようとしていた。
 制止する遠子の声が響く。遠子はゆりの日記から、全く違う結末を導き出す。…

 6冊目のモチーフは泉鏡花。ますます作家論になってきてます。
 泉鏡花の作品は、波津彬子さんの漫画で読んだきりです。五七調の台詞が耳に心地いい。
 遠子先輩が出した結論は、何だか気持ちがよかったなぁ。海外で生まれた子供は、やがて姫倉へ戻って来るんでしょうか。麻貴先輩とも関わるのかな。
 麻貴先輩と言えば、流人くんとどうやら仲直り(?)したようで。…ええと、でもそこまで行っちゃうの?(苦笑;)。子供が出来て結婚して、ってちょっと順番違ってるようですが、それは同じ相手なんでしょうか(←こらこら;)。次で遠子先輩の正体(?)も明らかになるようです。