読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

頭の大きな毛のないコウモリ 澤村伊智異形短編集 澤村伊智著 光文社 2024年

 短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 禍(わざわい) または2010年代の恐怖映画
 ホラー映画『禍』の撮影現場に同行し、その場で映像の編集作業をしている「僕」澤木。「呪われた映画」と噂されるだけあって、映り込みがあったり事故が起きたり、現場は不穏な雰囲気。やがて、演者の一人アイドルの女の子が死体となって見つかる事態に。だが、監督は撮影を続けるという。

 ゾンビと間違える
 9年前、アメリカでゾンビが発生、大量の犠牲者の後 対策法が見つかって以来。この国ではお年寄り、障害者、ホームレス等をゾンビと見なし、退治していい、という暗黙の了解ができてしまった。幼馴染の美雪は、引きこもりの兄をゾンビと間違えたい、と漏らすが周囲はそれを許さない。だが、兄の凶行はエスカレートし、とうとう美雪は両親共々襲われてしまう。

 縊(くびる) または或るバスツアーにまつわる五つの怪談
 今から●年前の御道かすみのバスツアー。低迷期だった彼女と交流できるというそのバスツアーについて、参加者やマネージャーが語るそれは、共通して「一日目の夜、彼女が死んでいた」「次の日にはまたツアーに参加していた」というもの。アイドル本人の証言でさえ。今、演技派女優として再評価されはじめているというのに。

 頭の大きな毛のないコウモリ
 保育園の保育士と母親との交換ノート。食が細く、癇の虫が強い息子を心配する母親と、それを優しく力づける保育士のやりとりは、やがて思わぬ方向に流れ始める。

 貍(やまねこ) または怪談という名の作り話
 従兄の啓介さんから聞いた話。小学校の頃のクラスメイト、いじめられっ子のNくん、リーダー格のG、腰巾着のH、マドンナ的存在のMさん。やがて、彼らは次々と殺されていく。Hは広い自宅の庭の真ん中で高所から落ちたような状態、Mさんは電話ボックスの中で死体が見つかった。啓介は誘われて行ったNくんの家で、抽斗から出て来るなにものかを見る。

 くるまのうた
 わらび餅や石焼き芋等、移動販売車に関する怖い噂、都市伝説について、その源流はどこから来たのか。先輩の考察を聞いて興味を持った「ぼく」は、より内容をブラッシュアップして記事にしようと、先輩の家を訪ねる。

 鬼 または終わりの始まりの物語
 オカルト雑誌の編集者 昌は常連投稿者の福山圭太郎と親交を結んだ。鼻持ちならない先輩の愚痴をつい口にしてしまったことで、圭太郎は動き、その膨大で正確無比な知識が先輩を社会的破滅に追いやることに。だがその後、圭太郎は体調を崩し、文字通り消えて無くなってしまう。圭太郎の母親曰く、彼は上流から流れてきた子なのだとか。

 自作解説
 それぞれの作品についての解説が、作者の性格を明らかにしていく。それへのバッシングへの反論も。…

 ああ、それは思い当たらなかったなぁというものもあれば「こう来るか」と思うものあり。
 元アイドルのバスツアーの内幕の下世話さ(失礼;)や、元カリスマ編集の品性の描き方なんかは、この作者の真骨頂だなと思ったり。こういう人物が真っ先にやられることで溜飲が下がったりするんだよなぁ。ホラーには欠かせない要素になるんでしょうね。
 作中で言及する「目指してもなれないもの」として、『リング』『残穢』『黒い家』や『姑獲鳥の夏』が挙げられていて、へぇ、と思いました『残穢』なんだ、『屍鬼』ではなく。怪談をモチーフにしている点で、『残穢』の方が作者的には親しみ深いのかな。
 『ドラえもん』や『桃太郎』の新解釈は本当に面白かったです。
 解決無く、ふわぁっと終わる怖さ。これは怪談の怖さですね。