読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”見習いの、傷心。 野村美月著/竹岡美穂イラスト ファミ通文庫 2010年

 “文学少女”新シリーズ第二弾。

 “文学少女”見習いの、傷心
 「日坂菜乃さん、ぼくはきみが、きみが大嫌いだ」――心葉はそう告げて以来、本心を見せず取り繕った笑みで菜乃に対するようになる。何とかこの状況を打破しようと、菜乃は夏休み合宿を計画。姫倉麻貴の企みもあって、北陸の姫倉家別荘を訪れることに。シュトルムの『みずうみ』を読みながら心葉を待つが、ようやく来てくれた心葉はよそよそしい態度を崩さない。メイドだという少女・魚谷紗代も菜乃への敵意を隠さない。幽霊騒ぎのさ中、足を挫いた菜乃は心葉に思いのたけをぶちまける。

 “文学少女”見習いの、怪物
 文化祭。文芸部はコーラス部部長・仙道十望子こと十望先輩の強引な誘いのもと、音楽劇を演じることに。題目はメアリ・シェリー『フランケンシュタイン』。若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインに心葉、その婚約者エリザベスに琴吹さん、ヴィクターに心酔するウォルトンに菜乃と言う微妙なキャスティング、怪物フランケンシュタインは影絵とコーラスで表現する。だが練習初日、いきなり妨害工作にでくわした。
 ロッカーから転がり出て来た胸にナイフの突き立った人形、シナリオに落書きされた「婚礼の夜に会いにゆくぞ」の緋文字、なくなったワインレッドの表紙の交換ノート。事件を解決すると息巻く菜乃は、昼休みに一人音楽室に張り込み、髪の長い少女に出会う。彼女はおそらく烏丸雫、十望先輩の親友で、去年までコーラス部にいたらしい。部内で先輩からいじめにあい、その復讐に先輩連中の隠された本性を暴くような行動をして、十望先輩自身に糾弾され追い出されたとか。今回の嫌がらせも、おそらくそのことに関係しているに違いない。
 彼女の影の部分を理解できない菜乃に、心葉は告げる。「怪物なんて、いない。人が怪物になるんじゃないか」――。
 創造主に裏切られた怪物と親友に裏切られた彼女が重なる。怪物を拒絶したヴィクターは、怪物を追うハンターになった。ヴィクターもまた、罪の意識に苦しんでいた。文化祭直前、階段から落ちて足を怪我した十望先輩に、心葉は言う。「“怪物”の正体が分かった」
 文化祭当日、学校に来ない十望先輩を自宅まで迎えに行き、漸く幕が開く。心葉が前夜に書き加えた台詞が、十望先輩のソロが二重の意味を持つ。菜乃はウォルトンとして、自分の答えを見つけ出す。…

 千愛と流のひと時を描いた『ある日の千愛』も収録。

 『フランケンシュタイン』って、こんなにドラマチックな話だったのか!
 この話ができた経緯、ってのは確かアシモフのエッセイか何かで読んで知ってたのですが、(もう既に名声を得ていた詩人シェリーが、「小説を書いてもいいかしら?」と尋ねる夫人に、「いいよ」と鷹揚に許しを与えたら、歴史的作品を書き上げやがったというエピソード。シェリーの詩を口ずさめる人はあまりいないけれど、フランケンシュタインの名前を知らない人はいないだろう、という皮肉なオチがつきます・苦笑)作品自体は読んだことがなかったので。こんな、全ての基本が詰まってるようなお話なの??
 ちょっとこれは読んでみたくなりましたね~。明るい所しか見ていない、理解できない菜乃が彼女なりに出した結論とか、リンクっぷりは相変わらず見事。菜乃と出会った烏丸さんの正体も、明かされてみればなるほど、でした。もう一度歌う気になってくれてよかった。陰ながら想い人の幸せを願う、ってパターンはツボなんですよね~(笑)。ただ、この作品だけを読んでいる人には訳分からなかっただろうなぁ。前シリーズから読んでいることが大前提でしたね。
 シュトルム『みずうみ』は読んだことがありました。氷室冴子さんの『アグネス白書』の中に、劇中劇として出てたので興味を惹かれて。ただ、その時はあまり面白いとは思わなかったな~。恋愛小説にヒキがないのはその頃からなんですね(笑)。
 さて、菜乃の親友・瞳まで心葉先輩争奪戦に参戦、宣戦布告しました。次で最終巻みたいですね。心葉、老若男女問わずもてるな~(笑)。作中の芥川くん×心葉の同人誌は、ちょっと読んでみたいかも(笑)。