読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

のぼうの城 和田竜著 小学館 2007年

 ネタばれしてます、すみません;

 石田三成二万の軍勢に、たった二千で立ち向かった男が、いた。
 時は乱世。
 天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。
 武州忍城
 周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。
 総大将・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。
 智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった――。
 この城、敵に回したが、間違いか。                           
                                   (帯文より)…これ、帯文かっこいいなぁ。

 北条氏直小田原城を攻略せんと、豊臣秀吉は動く。北条家の支城・忍城攻めを命じられたのは石田三成。三成に武勲を立てさせてやりたいと言う秀吉の親心だったが、実は城主・成田氏長は既に秀吉への降伏を決めていた。自分は小田原城に赴くが、好戦派の家臣を連れて行く訳にはいかない。忍城に残したのは叔父の成田泰季、その子成田長親、家老の正木丹波守、酒巻靭負、柴崎和泉守など。
 三成は忍城への使者に、長束大蔵大輔正家を立てる。氏家の内通を知りつつも、正家の不遜な態度で城主の怒りを引き起こし、長親から開戦の言葉を引き出す。戦によって田畑が荒らされると嫌がった百姓たちも、長親が決めたのならと籠城に加勢する。
 東南の門佐間口を守るのは槍の名手、正木丹波守。漆黒の魔人と徒名される自らの武功と深田を利用して正家を蹴散らす。
 東の門長野口には柴崎和泉守。大谷吉継の鉄砲部隊を十分引き寄せ、堰き止めた大量の水で押し流す。
 南の門下忍口に酒巻靭負、相手は石田三成。老兵ばかりで油断を誘い、本隊を城門に誘い込み、待ち伏せした上での混乱、同志討ちを引き起こす。
 一旦引いた三成は、今度は水攻めを計画する。秀吉に倣って銭を撒き散らして堤を造り、五日後、忍城人工湖に水没した。絶体絶命と思われる中、湖上に本丸のみが浮かぶ忍城から、翌日、一艘の小舟が滑り出て来る。舟上には直垂をまとった大男が一人。長親は敵味方見守られながら、田楽踊を舞い始めた。…

 爆笑問題太田光大絶賛、の謳い文句に惹かれて手に取った一冊です。何しろ太田さん推薦の本で今まで外れた試しがないので。
 いや~、面白かった。
 歴女ではない私にとって、始め、人物関係がなかなか把握できず(相関図か家系図か人物紹介が欲しかった;;)、なかなかエンジンがかかりませんでしたが、城攻めが始まってからは一気でした。もう読み終わっちゃうのが勿体ないくらい。こんな史実があったんですね~。
 何なんでしょう、とびっきり陽性。『バトルロワイヤル』とか『終戦のローレライ』(映画『レオン』でもあったな)では、例え途中上手く行っていても、「これきっとハッピーエンドには終わらないな」と言う絶望感が常に底を流れていたのですが、そういう不安がまるでない。本当に爽快に楽しめました。
 登場人物がみんな気持ちよくてですね。悪役でも何だか憎めない。映画化されるそうですね、正家役の役者さんも、きっと楽しんで演じると思うなぁ。
 最終的にはどうしても切なくなってしまったのですが、これは負けた側の話なので仕方ないですね。
 装画がオノ・ナツメさん。これが何だか版画みたいで、すごくあってる。
 楽しかった~、最後まで読んでよかった。