読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

すみせごの贄 澤村伊智著 角川ホラー文庫 2024年

 比嘉姉妹シリーズ第三弾。連作短編集。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 たなわれしょうき
 中一で不登校になった「僕」稲葉翔太は、父親の勧めでオカルトライター野崎の取材に同行する。行き先は滋賀県のT町、手が四本ある鍾馗の瓦を飾る風習があるらしい。その町には、騙し討ちで殺された若い男が恨んだ相手を殺して回っていた伝説があり、その男を避けるために鍾馗を飾るのだとか。山道が崩れて帰れなくなった翔太たちは、一晩T町に泊まることに。その夜、翔太は何者かに襲われる。結局、犯人は幽霊ではなかったのだが…。

 戸栗魅姫の仕事
 数年に一度、行方不明者が出る旅館を浄化してほしいとの依頼を受けて、インチキ霊能者の戸栗魅姫は、兵庫県R市にある老舗有名旅館を訪れた。だが彼女も、宿泊していた子供 今里珠美と異空間に取り込まれてしまう。誰もいない、でたらめに繋がる部屋や廊下を彷徨う二人。だがそこで、魅姫たちはライターだと名乗る鈴木華子と出会う。彼女と行動を共にするうち、珠美の言動のおかしさが露わになって来た。華子は、震災当時 焼死した少女がいると語り始める。嘘吐きで有名な少女だったと。

 火曜夕方の客
 毎週火曜日の夕方、カレーを買いに来る女性客がいる。いつも一口だけ食べて、それともう一人前をテイクアウトにして持って帰る。不審に思い後をつけると、墓地で消えてしまった。異常は感じないという真琴、だが女性客の来店頻度は上がり、やがて店主が襲われる。話題作りのための偽装がばれる店主、だが真琴はその段になって、わずかな痕跡を感じ始めた。真琴はそれを追い始めた。

 くろがねのわざ
 『惑乱の夏 ~愛、ほとばしる頃』という邦画は、特撮ファンにはボロカスに酷評されている。特殊メイク、特殊造詣を担当したのは鉄成生、突出した才能の持ち主だったのに、この映画ではその仕事がやっつけだとこき下ろされていた。ライターの谷村は先輩たちの言を受け、その映画について調べ始める。この映画を褒めると体調が悪くなる、というジンクスを聞いていながら。

 とこよだけ
 心霊スポットを巡るレポのため、先輩ライターの筑井と共に床代島に行くことになった野崎。かつて釣り場だったそこは、潮の流れが変わって魚が取れなくなり、今では無人島になっている。何人もの人間が興味本位で島に渡り、行方不明になっているという。嫌がる地元漁師に頼み込んで渡った先には、ぼろぼろになった死体と、彼が見たと思われる幻を書いた日記が残っていた。そして二人とも、懐かしい人の姿を見始める。

 すみせごの贄
 ある日「外出する」と言ったまま失踪した高級料亭の元料理長。彼の料理教室に通っていた生徒たちや、アシスタントの娘によると、失踪前から奇妙な予兆があったらしい。生垣から覗く不気味な人影、傷付けられた門柱の表札、教室で彼が零した「すみせご」という譫言。代理の講師としてやって来た女性料理研究家は、その真相を解き明かす。…
                (裏表紙の紹介文に付け足しました)

 澤村さん、ハイスピードで刊行するなぁ。
 兵庫県のR市ってのはどこがモデルなんだろう、やっぱり有馬温泉かなぁ、と本筋には関係ないことを思ってしまいました。後味が悪い作品が多い中、この作品は珍しく後味がよかったので。で、澤村さんお得意のミスリードパターンでしたね。
 ホラーというのは民俗学(…でいいのかな)と相性がいいんだな、というのを改めて認識しました。全国の言い伝え的なものを集めてそれを膨らませていけば、まだまだお話は作れそうな…。それにしても、比嘉姉妹は今どういう状況なんだっけ(←こら;)。いや、時系列通りに書かれているとは思えないので;