読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

曽呂利!秀吉を手玉に取った男 谷津矢車著 実業之日本社 2015年

 堺の町で、秀吉を愚弄した落首が見つかった。調べたところ、職人長屋に暮らす鞘師の曽呂利新左衛門という男の仕業だった。捕えられて討ち首になるはずが、持ち前の才覚で死罪を逃れたどころか、口八丁手八丁で秀吉に取り入り幕下の一員に収まってしまう。
 鮟鱇顔の醜男で、天才的な頓知の才能と、人の心の中に入り込む術をもって、曽呂利は秀吉のもとで結束していた臣下の人々を翻弄し、彼らのあいだに小さな亀裂を作っていく。
 蜂須賀小六には、かつて臣下だった男へ追従する鬱屈を思い出させ、病気に追い込む。
 千利休には、元々の己の価値観、美意識を再認識させ、秀吉への反抗心に火を点ける。
 石川五右衛門には様々な大名家へ手紙を置いて来させ、不穏の種を撒き散らす。最終的には大阪城に忍び込ませて内通者の存在を匂わせ、秀吉を猜疑心の塊にする。
 豊臣秀次には謀反の濡れ衣を着せ、失脚させる。
 曽呂利の存在を怪しむ石田三成。黒幕は足利義昭ではないかと疑い裏工作するが、秀吉の死後、自身も旧秀吉幕下で孤立。曽呂利に逃亡策を授けられ生き延びる。
 石田三成の隠密、策伝は実家・金森家存続のために極秘裏に動いていた。曽呂利を暗殺しようと試みたが失敗し、関ケ原以降は曽呂利に命を救われる。
 秀吉を笑わせ、喜ばせるお気に入りの側近として、次第に不気味な存在感を増していった曽呂利。この男は果たして股肱の臣なのか、はたまた獅子身中の虫なのか。そして曽呂利はいったい何をしようとしているのか。…
                                      (出版社HPの紹介文に付け足しました)

 
 新聞に紹介されていて、興味を持った一冊。この作者の作品を読むのは初めてです。
 …どこまで史実なんだろう。曽呂利新左衛門という名は聞いたことがありましたが、秀吉の側近とは知らなかった。本当に鞘師だと思ってました。
 面白かったです。するすると読めました。文章が軽くてこういう時代ものには違和感持つ人いるだろうなぁ、とは思いましたが(だって「必死こいて」なんて表現が地の文で出てくるんだもの)、本当に読み易い。
 私は生まれてこの方阪神間で過ごして来て、今の職場で初めて堺出身の人に何人か出会ったのですが、この地域の人の個性の強さは特別なんじゃないかしら、と薄々思っていたところにこの作品です。…やっぱりそうだったんだわ(爆!)。独立性の高い意識、人懐っこいけど押しも強い、人の言うこともあまり聞かない、でも憎めない(←かなりな偏見・苦笑;)。
 いやでも、曽呂利、本当、嫌な奴(笑)。私近付きたくないなぁ。