読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

赤い月、廃駅の上に 有栖川有栖著 メディアファクトリー 2009年

 有栖川有栖の新天地! 
 恐ろしくも、どこかやさしくせつない10の奇談。
 車窓から幻想の風景を望み、いざ幽妖の旅へ。(帯文より) …だそうで。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

 夢の国行き列車:
 酒を飲めば愚痴ばかり、六つ年上の上司は大阪万博が最後で最高の思い出だと語る。家庭内のいざこざのため家に足が向かない様子だったある日、地下鉄の終電に乗った彼は行方不明となる。万博の頃は会場まで乗り入れていた地下鉄の中で。
    …知らなかった~、トンネルあるんですか! 東三国の自由の女神はまだあるのかな(笑)。

 密林の奥へ:
 異国を旅行中、「列車ほど大きな鳥がいる」と言う噂を聞いた。思わず惹かれて密林の奥へ向かう「彼」。だが目的地には辿り着けず、森で線路が育つばかり…。
    …いや、これ怖いよ;

 テツの百物語:
 ウェブサイトで知り合った5人がオフ会を開いた。持ち寄った鉄道怪談が丁度百話に達した時、踏切の警報音と遠くから列車がやってくる音が。
    …最後の一言「音だけでも録ればよかった」にはちょっと笑ってしまった。
    テツのサガですね~(苦笑;)。

 貴婦人にハンカチを:
 SL〈貴婦人〉に乗った英嗣の、向かいの座席に座ったのは、優雅で理知的な貴婦人のような女性だった。一目で好意を持つが、彼女は小学校教諭で、事故に遭った教え子の見舞いに行く途中だと言う。

 黒い車掌:
 パノラマヴューのこの列車に乗って、二歳で死別した母を、懐いていた幼稚園の先生を、小学校時代の親友を、父親を、初恋の相手を、かつての恋人を見かけた梢子。車掌の姿が黒くぼやけて行くのも気になる。これから何が起きるのか、梢子には薄々察しがついていた。

 海原にて:
 海洋資源調査のための船で、船長の怪談に花が咲く。佐倉は船長に、甲板に出てみるよう勧められた。日本人なら見られるかもしれないものがあると言う。
   …すまん、これはギャグかと思った。

 シグナルの宵:
 鉄道ジオラマのある小さなバー〈シグナル〉。そこの常連だった青年・大庭が郷里で飛び込み自殺をした。大庭を悼む常連客の前に、彼とそっくりな男が現れる。彼は大庭の双子の弟だと名乗る。
 
 最果ての鉄橋:
 三途の川は、最近は列車で渡るらしい。長い鉄橋を渡る途中、回送列車の横転に巻き込まれた。
   …すまん、これもギャグかと思った。

 赤い月、廃駅の上に:
 登校拒否になった彼は、クロスバイクで自転車旅行に出た。人間関係に躓いたのに、見知らぬ人とは難なく話が出来た。少し自分に自信がついた頃、彼はある廃駅で一夜を過ごす。赤い月が上る夜、偶然一緒になったフリーライターと共に。

 途中下車:
 通勤途中、電車の中から「アタシャール」と書かれた看板を見かけた。それは今は亡き元妻との思い出の言葉、二人だけに通じる隠語。すれ違いから仕方なく別れた女優の妻は、事故で亡くなる寸前、彼の名前を呼んでいたと言う。たまらず看板を掲げているビルを探し出し、その店に入ろうとする。…

 手にとってぱらぱらとめくって、「…あ」と思いました。この装丁はもしかして祖父江さん。…すごい人だよ、装丁で個性出てる(笑)。
 笑わせたいのか怖がらせたいのかどっちやね~ん!と突っ込み入れたくなるような作品もちらほら。…一応ホラー、なのかなぁ。有栖川さん、色んなジャンルに挑戦してますね(笑)。
 でもよかったんですか、作家生活20周年記念出版がこの作品集で。ここは今までの集大成、本格ミステリで出しといた方が良かったんでは…って余計なお世話ですね、すみません;