読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

幻坂 有栖川有栖著 メディアファクトリー 2013年

 大阪の天王寺七坂を舞台にした怪談集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 清水坂
小さい頃、一緒に遊んだ幼なじみとその妹ヒナちゃん。両親の離婚により、離れた学校に転校して行ったヒナちゃんは、そこに馴染めなかったらしい。ある日、玉出の滝に山茶花の花が流れて来る。彼女が喜んでいた山茶花の花が。

 愛染坂
作家は愛染坂でとある女性と出会った。小説家を目指していて彼のファンだと名乗る彼女。もう一度偶然の出会いをした作家は、彼女を運命の人だと思う。やがて彼女は作家デビューし、その作品は高い評価を受けた。彼のスランプとは裏腹に。

 源聖寺坂
デザイナー鵜戸美彌子の別荘で、河合樹は実家の近くの源聖寺坂を描いた絵を見つける。元々あまりこの坂に好印象を持っていなかった樹。その上、この別荘には子供の幽霊が出ると言う噂があるという。その子供は、絵に描かれている子供にそっくりだった。

 口縄坂
友人に口縄坂に連れて来られた美季。たくさんいる猫に夢中にになった夜、彼女は金縛りにあう。その上、足の指をザラリとしたものが触れている感触。どうもそれは猫の舌に似ている気がする。

 真言
在宅で小説の翻訳をしている「わたし」。学生の頃のバイト先の上司で、兄のように慕っていたあなたと、今も会っている。真言坂の途中で、もう死んでしまったあなたと。でも今日は、あることをあなたに告げようと思っている。

 天神坂
天神坂の割烹で、男女一組が心尽くしの料理に舌鼓を打つ。男は私立探偵、女はもうこの世にはいない人だった。

 逢坂
『しんとく丸』をモチーフにした芝居の脚本が気に入らない。主演俳優の駿介は苛立ちを隠せない。「視える」彼には、先日死んだ同じ劇団員のひとみが、自分に逢いに来ないことも不思議だ。所詮彼女にとって自分は、「兄のようなもの」の域を出なかったのだろうか。

 枯野
芭蕉は、あやかしのものにつきまとわれていた。影に怯えながら大坂に来て、芭蕉は気付く。あれは己自身だと言うことに。

 夕陽庵
難波の夕陽を拝みながら大往生を遂げた歌道の栄達・藤原家隆を偲ぶ。


 濱地健三郎という心霊専門の探偵は、この先シリーズになっていくんでしょうか。心霊を扱っているのに、妙に論理的なのがちょっと楽しい。あんなに美味しそうなものを食べさせてもらえるなら、さ迷い出るのも悪くないかも、と思ったりもしましたし。(←こらこら;) でもあれ、お代はどうなってるんでしょうね、濱地さんの場合はともかく、真田十勇士なんかがお客で来た時には。
 有栖川さんという人はロマンチックだよなあ、としみじみ思いました。「いい話」系が結構沁みるんだよなぁ。