読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

桜庭一樹短編集 桜庭一樹著 文藝春秋 2013年

 短編集。

このたびはとんだことで
男の死後、浮気相手の女が本妻を訪ねて来て起きた騒動。

    …これは喜劇だね。白い和服を喪服で着てくる、って勇気あるチョイスだなぁ。

青年のための推理クラブ
お互いを文豪の名で呼び合う読書クラブ。アンブローズは、礼拝堂に入るジャンを見かける。ジャンはマリア像を盗み出そうとしていた。友人としてどう対処すべきか、サマセット、ヘルマンと共に頭を悩ませる。

    ジャンの行為自体は誰にでも分かるものなのですが、あともう一捻りの真相。

モコ&猫
大学に入って、一目でぼくはモコに惹かれた。彼女を追って映画研究会に入り、陰でストーカーと噂され…。でも、ぼくはモコと付き合う気はない。遠くから見ているだけでいい、一緒のフレームに入っているだけでいい。

    そりゃ脂取り紙噛みしめてる男の子がいたら引くわ~。

五月雨
山の上ホテルで、缶詰になっている作家二人。一人は老齢の大御所、一人は新進気鋭の若者。このホテルに長く勤める桜里は、この若者を見たことがあるような気がする。彼本人ではない、とてもよく似た女性を、不吉な思い出と共に。

冬の牡丹
美人で独身の山田牡丹、頭が良くてしっかり者で、両親自慢の娘だった筈なのに、今は妹にその場所を取られて居場所がない。母親はやたらと見合いをセッティングするし、父親はそんな母と妹に何にも言わない。一人暮らしを始めた牡丹はある日、したたかに酔っ払ってアパートの隣の住人に助けて貰う。

     冒頭、「したっ、たかに酔っ払って」の言葉が目を引く一編。
     連想したのは西炯子の漫画『娚の一生』。でも後半部分はえらく感じが変わって、何だか
     芥川賞作品みたいな雰囲気になりましたね。

赤い犬花
夏休み、東京から義理の祖父の家に預けられた太一は、ユキノと名乗る不思議な少女に出会う。ユキノは、神隠しにあった人が死んでいたという、三本松に行きたいのだとか。成り行きで、太一もその小旅行に、つきあうことになる。…

     これもやっぱり、オチは途中で見えるんですけど、なんだかオカルトチックな場面もあったり。
     こういう『スタンドバイミー』的なロードノベルは、やっぱり好きです。

 桜庭さん、えらく直球な題名の本を出しましたねぇ(笑)。
 あとがきが作者本人による自作解説。恩田さんとか有栖川さんとかはよくやるけれど、桜庭さんは珍しい気がする。
 言葉の選び方とかが独特ですよね。幼いような老練なような。やっぱり面白いなぁ。
 でも実は、装丁がこっそり気に入りません。髪を左右に結わえた女の子の後姿とその分け目が道に繋がる構図のイラストは、何かちょっと不気味で。大体、この女の子は誰なんだろう。