読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ) 野村美月著 ファミ通文庫 2006年

 ネタばれになるのかな、すみません;

 井上心葉(このは)、十六歳男子、文芸部所属。中学三年の時ついうっかり「井上ミウ」と言うペンネームで覆面美少女作家としてデビューしてしまい、その作品がベストセラーになってノイローゼになった過去を持つ。おかげで心葉は何より平穏と平凡を愛するようになった。
 何とか更生して聖条学園高校に受かって二年。そこで物語を食べちゃうほど愛する“文学少女”天野遠子先輩と出会う。ポール・ギャリコは最上級のソルベ、フィッツジェラルドはきらきらのキャビアシャンパンの味とのたまうとぼけた天然少女は、勝手に恋文の代筆を引き受けて来てしまった。
 依頼主は一年生の竹田千愛、渡す相手は弓道部の片岡愁二先輩だとか。何通か代筆した所で、弓道部に片岡愁二と言う人物などいないことを、心葉はクラスメイトの芥川から聞く。しかも千愛には別に付き合っている彼氏もいるらしい。騙したのかと尋ねる心葉を、千愛は愁二は本当に存在するのだ、と弓道部に連れて行く。弓道部には丁度10年前の卒業生が陣中見舞いに来ていた。OB達は一様に、心葉を見て動揺する。心葉は10年前に屋上から飛び降りた弓道部員・片岡愁二にそっくりらしい。
 片岡愁二は何故自殺したのか。その一か月前に恋人を事故で喪っていたことが本当に原因なのか。図書室の太宰治人間失格』に挟んであった遺書らしきものでは、愁二がSなる人物に、本当の自分を見抜かれて追い詰められ、更に人まで殺してしまったと告白していた。
 遠子の妄想、もとい想像で愁二の死の原因は解明された。だが千愛の行動の理由が分からない。心葉はやはり『人間失格』に隠してあった千愛のノートを見つけてしまう。千愛の本当の姿に気付いた心葉は屋上へと駆け出す。…

 あちこちで話題の『“文学少女”』シリーズ。
 市立図書館に在庫がなく、他の図書館から取り寄せて貰った一冊です。…アニメ化も決まったみたいなのに手に入らないなんて;;
 面白かったです。二転、三転する真相。私は太宰治作品は『走れメロス』の入った短編集しか読んでませんが(中に『駆け込み訴え』もあったなぁ)、それでも十分面白かった。太宰の自分に話しかけてくるような文章、ってのは星新一新井素子のデビューに当たっても例えてたみたいですね。
 心葉の過去の瑕ははっきりとは書かれていませんが、この美羽と呼ばれる少女との因縁は、いずれ描かれていくんでしょう。
 イラストが竹岡美穂さん。すごくあってる。可愛くて繊細で、ご本人も楽しんで描いてるのがしみじみ伝わって来ます。
 続きも読みたいんですが、ずーっと他館取り寄せなのは辛いなぁ;;