読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ノスタルジア 埜田杳著 角川文庫 2009年

 第二回野生時代青春文学大賞受賞作品。
 中編一本、短編二本収録。

 些末なおもいで
 この頃、僕は眠れない夜の底にいる。
 夜中、結露した窓を開けると、そこに隣のクラスの矢鳴恭己が歩いていた。深夜、深海魚のように町中を徘徊する矢鳴。知り合ったのも束の間、彼が「あれ」と呼ばれる病に罹ったらしいことがわかる。体の一部が痒くなり、信じられない物が生えて、その部位を次々に持って行ってしまう奇病。矢鳴の場合はまず、左目から翼が生えていた。
 矢鳴と、彼の幼馴染の女の子通称「キューピーさん」と親しくなる「俺」檜山。キューピーさんのことを仄かに想う矢鳴は、少女らしい潔癖さを引きずって人を信用しないキューピーさんを心配する。そしてキューピーさんには話せないような思いを、俺に淡々と語る。その扱いの違いに哀しさを感じながら、それは檜山の、母親の保護下から一歩踏み出すきっかけにもなる。
 
 dysprositos
 元素ジスプロシウム、意味はギリシャ語で「近付き難い」。
 連想したのは高校の時のクラスメイト、森川。二浪の末希望大学に合格した辻が母校に報告に行くと、そこに偶然森川も就職報告に来ていた。森川の何もかもが気に入らなくて、散々いやがらせをしたあの頃。もう二度と会いたくないと思っていたのに。

 熱い骨
 飼い始めた仔犬が妹に噛みつき、犬を手放すことになった。
 貰い手になってくれたのは、クラスメイト葵の兄・伊織。大学生の引き籠りなんだとか。土日、彼女は犬の散歩に付添っていたが、夏休み中は控えることになった。始業式の日、葵は忌引で欠席していた。…

 埜田さんの本は初めて読みました。
 勤め先の人に恩田陸著『夜のピクニック』を貸したら、「お返しに」と貸してくれた本です。
 …どうしよう、BLに読めないこともない…;(爆!)
 作品等への予備知識が全くない所から読み始めたので、『些末なおもいで』の奇病が明らかになった時点で「…おお!」と驚きました。ごく普通の青春小説ではないのね!とか思ってたら、…あれ? 何だか私の中のヨコシマな回路が動くわ;;
 二本目『dysprositos』ではもっと動くわ;;
 冷たくて寂しい人との関わりの難しさ切なさを、詩情豊かに書きあげて…るんです、けどね。 
 解説が三浦しをんさんです。でも勿論ここには怪しげなこと書いてらっしゃいません、さすが。
 …さて、何て感想を言って返そうか…;