読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

不連続の世界 恩田陸著 幻冬舎 2008年

 音楽プロデューサー・塚崎多聞を主役とした連作短編集。

 木守り男:
 神田川沿いを散歩しながら、今度デビューさせるバンドの名前を考える。そこで時々出会う放送作家・田代は自分が見た不思議な夢の話をする。ビルに閉じ込められた子供たち、上への表示しかないエレベーター。続きをせがむ多聞に、田代は「コモリオトコに聞かせて貰え」と謎の言葉を口にする。直後、多聞は骸骨のように痩せた男を見、友人のロバートは自分の家の執事の幻を見た。そして、橋の袂に男の水死体が浮かぶ。
 
 悪魔を憐れむ歌:
 地方のFM局で流れて以来、何人もの人間が不審な死を遂げたと言う「死にたくなる音楽」。ただの都市伝説かと思いきや、どうやら実在しているらしい。多聞が突き止めていくと、N県で5年前行方不明になった女性とその父親が、その歌の製作者として浮かび上がってくる。

 幻影キネマ:
 ミュージッククリップのロケハンとしてO市を訪れた多聞。数々の映画のロケ地でもある故郷を、何故がバンドのボーカルは恐れている様子。彼は、この地で映画の撮影現場を見ると、自分の周りにいる誰かが死ぬのだと言う。始まりは赤い犬が走り回っている八ミリ、死んだ誰もが20センチくらいの切り傷を負っていた。

 砂丘ピクニック:
 翻訳家の友人とT砂丘を訪れる。彼女が今翻訳しているエッセイで、著者はこの場所で「砂丘が消えた」経験をしたらしい。その不思議を解明しようとする二人の目の前で、とある写真家の記念美術館のミニシアターに入って行った青年がいなくなってしまう。

 夜明けのガスパール
 夜行列車で、古くからの友人三人と酒盛を繰り広げる多聞。仲間たちが披露する怪談につられ、多聞は行方不明の妻が各地から送って来るポラロイド写真や、この頃頻繁にかかって来る無言電話の話をする。…

 塚崎多聞が初登場する『月の裏側』については記憶がかなりおぼろげです。「道端に耳が落ちてたんだよなぁ」とか、「確かこの本、通勤途中乗り換えの駅で読んでたら、どこか外国から出稼ぎにきた外人さんに話しかけられたんだったよなぁ」とか、妙な思い出しか浮かんでこない。作品自体ののラストは霞みがかかってるわ…。(←逃避してるなぁ;)
 いや、でも覚えてなくても関係なかったです。多少無理がないかいこのオチは、と思う話もありつつ、充分楽しめました。一番なるほどと思ったのは『幻影キネマ』だったなぁ。かなり残酷な真相でしたが。
 フランス人の小話(?)も可笑しかったし。…そうか、パリはフランス人さえいなければ最高なのか(笑)。
 それにしても恩田さん、不思議な夢見ますね。あれだけはっきりしてるとそれだけで一つの短編になりそう。