読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ポンチョに夜明けの風はらませて 早見和真著 祥伝社 2013年

 ネタばれあります、すみません;

 大雪の所為で、岡山で受験している友人が、卒業式までに帰って来られそうもない。折角四人でバンド組んで、卒業式のステージジャックをしてやろうと思ってたのに。
 北川又八はジャンボこと森田公平と共に、神山仁を迎えに行こう、と提案する。ジャンボの親父さんの車で、取りたての免許で、親父の形見のポンチョに身を包んで。でも又八には別の目論見があった。途中、名古屋の風俗店で、童貞を捨てようと言うのだ。
 箱根で赤いドレスのヒッチハイク女を拾ったり、名古屋で風俗嬢と知り合ったり。果ては京都で小中学生の頃の同級生まで合流して、倉敷を目指す寄り道だらけの旅。それは、今行方不明の又八の父親の足跡を訪ねる事とも重なって行く。
 チビで手先が器用で、とにかく思いついたら即行動、思い込んだら譲らない姿勢で周囲を振り回す又八、心も体も大きく丸い天ぷら屋の二代目ジャンボ、厳格な父親に押さえ付けられ、グレかけていた所を又八とジャンボに救われたジン、高校から仲間に加わったネズミこと田中優一。
 そこそこの芸能事務所に所属しながら、男運に恵まれず逃げてきた白川愛、まぁまぁ不幸な境遇を背負って福岡から流れ流れてジャンボに巡り会った大貫カンナ、神山仁を諦められずストーカーまがいの行動まで起こしてしまった衣笠祥子。
 合計6人になった冒険者は、一人待つネズミの元へひた走る。今さらながら、鮮烈な高校デビューを果たすために。…


 新聞で紹介されているのを見て、気になっていた作品。いや、とにかく題名のヒキが強くて。言わずもがな、これはアニメ『母を訪ねて三千里』の主題歌の一節ですよね。
 面白かったです。
 最初はね、ちょっとイラついたりもしたんですよ、又八の軽率さが勘に触って。白川愛の行動にも眉を顰めたし。それが後半、ジャンボの誠実さ、カンナの可愛らしさ、祥子の滑稽なまでの一途さ、ジンの噛み合わなさが相まって、何かわくわくしながら読んでました。最後にネズミにも花を持たせる展開も素敵。でも彼にだけ彼女できないままなのね。
 言い回しも妙にユーモラスで。カンナがジャンボにハマってしまった「どうしても愛にお金が介入してくることが許せない」って言葉は、「座右の銘」マニアのジンもメモっていい名言だと思うぞ。ジンが見た祥子の幻影「向かいのホームに、路地裏の窓に、こんなところにいるはずもないのに」って文章は、読んでて思わず吹き出しました。
 ジャンボはジンの気持ちを分かってたのかな。だから祥子を後押ししてたのかな。
 とりあえず、ジャンボかっこいい。もてるのも分かる気がしましたよ。