読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

慟哭 貫井徳郎著 東京創元社 1993年

 貫井徳郎、デビュー作。
 ネタばれあります、すみません;

 幼女誘拐殺人事件が起きた。指揮を取ったのは捜査一課長・佐伯警視。父親である大物政治家の手配で政略結婚した妻との仲は冷え切っていたが、同じ年頃の娘を持つ親として懸命に捜査する。しかし一向に犯人は浮かび上がって来ない。やがて第二、第三の犠牲者が出る。犯人と思しき人物から警察を嘲笑するかのような犯行声明が届けられ、翻弄される日々。自身の女性関係もマスコミに暴露され、署内でも家庭内でもますます四面楚歌になったある日、佐伯の娘も行方不明になってしまう。記者会見でわざと犯人を挑発するような言動を取ったことが徒となったか、娘は死体となって発見される。
 同時に、新興宗教にのめり込んでいく男・松本の姿が描かれる。救いを求めてあちこちを渡り歩く松本。ようやく見つけたと思った会で、彼は喪った娘の復活を願う。黒魔術を下敷きにした降霊術を密かに行う彼。娘の魂の依り代として、同じ年の幼女を狙う。…

 …今から本当にネタばれしますからね。
 ある程度推理小説にスレてしまってるとですね、これ犯人の察しがついてしまうんですよ。佐伯さん婿養子だし、時系列ずらして書いてるんだろうな、と。でもそう思いながらも確信が持てず、最後まで一気に読んでしまいました。途中では何度も「…あれ、見込み違いだったかな??」と首を捻ったし。この辺りが本当、上手い。
 貫井さんの作品は初めて読みました。「長くて読み辛い」イメージが何故かあったのですが、すらすら読めてびっくりしました。…新本格、侮り難し!…って勝手に何言ってんだか(笑)。
 巻末の北村薫さんの解説は絶対先に読んじゃいけませんね。今回珍しく本文より先に読まなかったんです、よかったよかった♪
 デビュー作らしい、全力投球作品でした。