読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

クジラの彼 有川浩著 角川書店 2007年

 自衛官恋愛模様を描いた短編集。

 『クジラの彼』:
 合コンで出会った史上まれに見る高物件の彼は、次にいつ会えるか分からない潜水艦乗りだった。携帯は繋がらない、連絡もつかない。二ヶ月、三ヶ月放っておかれるのは当たり前。例え会えても、次いつ会えるのかすら分からない。一方的に待たされるただでさえ過酷な恋路なのに、勤め先の社長令息がしつこくコナをかけて来る。…
     
 『ロールアウト』:
 K重工に勤める航空設計士・宮田絵里は、航空自衛隊の次世代輸送機要望のヒアリングで小牧基地を訪れた。格納庫への途中で通らされたのは何と男子トイレ。絵里の躊躇も理解できない様子の高科三尉の要望はトイレのコンパートメント化だった。

 『国防レンアイ』:
 生意気で居丈高なクセにめちゃくちゃかわいい彼女・三池舞子とは、腐れ縁8年の単なる同期。今日も民間人に振られた腹いせに、伸下雅史三曹を付き合わせて自棄酒を飲んでいる。惚れた相手に恋愛遍歴を逐一語られる辛さ、一夜の過ちもなかったことにされる残酷さ。何故なら三池にとって伸下は、裏切られたら致命傷になる相手だったから。

 『有能な彼女』:
 潜水艦乗りの夏木大和二尉の彼女・森生望は防衛庁の有能技官。魅力的な彼女に見合うだけの男だとは、自分はどうしても思えない。今日も久しぶりに会えたと言うのに、舌禍で彼女を怒らせてしまった。

 『脱柵エレジー』:
 脱柵。自衛隊基地や駐屯地から隊員が脱走すること。
 今日も恋に盲目となった新隊員が、恋人に「会いたいの」と泣きつかれ脱柵する。朝には戻るつもりだったと言う新人に、清田和哉二曹は自分の痛い体験談を語る。

 『ファイターパイロットの君』:
 三津菱重工技術者・高巳の彼女はファイターパイロット。せっかくのデート、綺麗に着飾りながらドッグタグを着ける天然振り。娘の茜にせっつかれ、高巳は初デートを回想する。彼女に喜んで貰う為にどんなプランを練ったかを。…

 …そうか、潜水艦の中ってそんなに臭いのかぁ。
 相変わらずテンポのいい会話、エピソード。くすくす笑いながらつるつる読んでしまいました。これ、装丁もいいですね。
 有能な彼女の望ちゃんは、あれかなり面倒臭い女の子じゃないのかなぁ、よくあんな揚げ足取りとも言える言動に付き合ってあげてるなぁ、と思ってたらあとがきで作者自身そう語ってましたね(笑)。でも結婚式、儀礼服は着た方がいいと思うな。人づてに聞いた話ですが、警察官だか自衛官だか、儀礼服着てたら大モテだそうですよ。普通は綺麗に着飾った新婦と写真を撮りたがる新婦の友人が、「…ごめん、旦那さん借りていい?」と旦那さんとばかり写真撮ったそうですから。制服の効果は絶大です(笑)。
 あとこれも人づてですが、船乗りの奥さん。大事な決定(子供の進路とか)の時にはいないし、いざいるとなったらべったり家にいて今までの生活ペース崩されるし、って不満たらたらなんだそうで。そのご家庭の場合「家にいる時くらい接待されて当たり前」って旦那さんの態度にも問題あったんでしょうが、こうやって帰って来たことを歓迎して貰える、ってのはそれだけで愛されてる証拠ですね(笑)。
 職場での「女の子扱い」が悔しいけど嬉しい、ってのは何となく解るなぁ。私は女性しかいない職場から「女の子扱い」される所へ転職したのですが、「…ラクだなぁ」とも思ったので(あれ、ちょっと意味違うかな;)。プライドのない発言、すみません;;
 どうやら順番としては『海の底』や『空の中』を読んでからの方がよかったようですが、予約が回って来なかったから仕方ない。いや、楽しかったです。