読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

カラマーゾフの妹 高野史緒著 講談社 2012年

 第58回江戸川乱歩賞受賞作品。
 ネタばれになってるかもしれません、すみません;

 カラマーゾフ事件から13年。次男のイワンは内務省モスクワ支局未解決事件課の特別捜査官になった。事件を改めて捜査し直し兄の無実を証明しようと、13年ぶりに故郷に戻って来る。
 父親フョードル殺しの犯人とされた長男ドミートリーはシベリアに送られ、その後労働中落盤事故で死亡していた。事件当時見習い修道士だった三男のアレクセイは教師になり、その天使的な性格で相変わらず地元の人々に愛されている。そして父親の愛人だったグリューネシカは革命の闘士になっていた。
 イギリスで心理学を修めた帝国科学アカデミー会員トロヤノフスキーと共に、イワンは父親の墓を暴き、殺傷痕の検証をする。改めて事件当時の各人の証言の矛盾に疑問を抱くイワン。やがて、事件を嗅ぎまわっていたゴシップ屋のラキーチンが、フョードル殺しに使用された凶器とそっくりの形状の物で撲殺され、続いて当時の予審判事ネリュードフも殺された。
 前事件と今回の連続殺人は関連しているのか。混乱の中、アレクセイがいなくなり、彼の妻とその友人も行方不明になる。アレクセイは革命思想に染まり、グリューネシカを通じて皇帝暗殺の企てに参画しようとしているらしい。
 イワンの記憶にある見知らぬ家、見知らぬ妹は存在するのか。恐怖に近い感情で、当時チェルマシニャー行きを回避した理由は。トロヤノフスキーの眼前で、イワンの人格は交替し、自らを「悪魔」と称する。下男スメルジャコフによって植えつけられた幼い日の罪悪感を克服し、イワンは漸く真相に辿りつく。
「当時の弁護士は真相まであと一歩というところまで迫っておきながら、最も重要な点を見逃している」。…


 今回の江戸川乱歩賞高野史緒さんだと知った時には驚きました。…江戸川乱歩賞って、プロが応募してもいいんだ。新人作家の登竜門だと思ってました。
 高野さんはファンタジーノベル大賞絡みでデビューされた作家さんで、作品が出るたび追いかけています。いかにもインテリ、好きなものに打ち込む姿勢、「ついて来られる奴だけついてこーい!」な作風。今回もそれが随所に見られましたね(笑)。コンピュータの描写なんか、デビュー作『ムジカ・マキーナ』を思わず彷彿しましたもの。
 いやいや、『カラマーゾフの兄弟』って、推理小説だったんだ…!(←本当かよ;)。
 原典を私は未読なので、楽しめるかどうか多少不安に思いつつ読み始めました。予約が回って来るまでに読もうかともちらっと思ったのですが、文庫で全三巻の厚みを見て読みかけもせずあっさり断念(←おいおい;)。そしたら本文にも「前任者の小説で最大の問題点は、言うまでもなく『長大であること』」の記述があって、思わずにやりとしました。でもこれだけ簡潔にまとめられる内容なのね~。このやたらと長いと言うのはロシア文学の特徴なのかしら、私は学生時分『戦争と平和』は読んだのですが(宝塚で舞台化されていたのをTV中継で偶然見て、そしたらむちゃくちゃ面白そうだったので手を出した)、これも本当に長くて、しかも後半は物語ではなく作者の意見が延々述べられていて辟易した覚えが…(苦笑;)。
 今回の小説の中のどこが原典にあって、どこまでが作者が付け足した部分なんだろう。既読の審査員があれだけ絶賛しているんだから、かなり忠実な「学説」なんでしょうね(©よしながふみ)。推理小説として面白いというより、原作の補完として見事なんだろうな、と思ったり。
 『カラマーゾフの兄弟』は丁度今TVドラマ化されていますし、そちらで見て読んだ気になろうかな(苦笑;)。とりあえず高野さん、受賞おめでとうございます。