読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

エヴリブレス Every Breath  瀬名秀明著  TOKYO FM出版  2008年

 ネタばれになるのかな、なってるな、すみません;

 コンピューターの中に存在する架空空間《BRT》。目的もなく、ただオンライン上にあるだけの世界。
 バーチャル世界でのそのキャラクターはもう一人の自分になっていく。ユーザのパソコンのデスクトップファイルを走査して、内面までキャラクターを作り上げる。ログオフしているときには、人工知能がユーザの代わりに考えて、行動し続ける。
 久保杏子は数理解析の専門家。金融派生商品の価格を様々な要素から予測し、理論立てて基本プログラムを開発している。知り合いの少女が喉の手術をして喋れなくなった。彼女・伊藤文音が《BRT》の世界に嵌っていたことから、杏子も《BRT》に入り、文音と交流するようになる。入院療養中の文音自身に代わり、ショッピングやスポーツ観戦、コンサートを楽しむ《BRT》内の文音。同級生・モトハラユウキとデートまでするが、現実世界のユウキが突然事故死。だが、バーチャル世界でユウキは生き続け、杏子はそれを見て《BRT》世界への接続を止める。
 現実世界の杏子はその後大学に戻り、同じ職業の男性と結婚して二児を設けた。夫も子供も孫娘も、ずっと鮮明になった《BRT》世界に参加する中、彼女はずっと「共鳴」を拒否し続けた。《BRT》の中の彼女がアナウンサーになり、通っていたサルサ教室の伝手で高校時代の初恋の先輩・野下洋平に出会っていることも知りながら、決して干渉しなかった。
 人間の記憶までデジタル化され全て記録されていく中、《BRT》世界と現実がリンクする。《BRT》世界のCGが現実に発表され、アナウンサー「杏子」の声が現実のラジオから流れる。子供や孫娘は、それでも「共鳴」しない杏子を不思議に思っていた。それは、杏子にとって拒絶ではなく尊重だった。…

 …頑張って粗筋書いてみました。でもこれが精一杯(笑)。瀬名さんの作品って、デビュー作が一番分かり易い、みたいになってるなぁ(笑)。
 『八月の博物館』だったかな、読んだ時に、ふと「瀬名さん、恋人できた(結婚した)のかしら」と思ったのですが、今回は「子供できたのかな」と思いました。…もしそうだとしたら、作品に私生活が反映される作家さんですね~(笑)。
 《BRT》世界説明のくだりを読んでいて、何となくブログを連想しました。例えば明日、いきなり事故か何かで自分が死んだとして、でもブログは残る。もしかしたらその後もコメントとか残して下さる方もいるかもしれなくて、形は少しずつ変わりながら一人歩きしていく。…変な広告とかいかがわしいサイトとかへのトラックバックばっかり増えていくのは嫌だけど(苦笑;)。
 「亜佐美」の正体や最後のリクエスト葉書はじ~んと来たし、野下が実はかなり早い段階で死んでいた、という現実には息をのみました。
 全ての記憶が記録されて残る世界、ってのはどうだろう。私は思い出したくもない記憶も多々あるので嫌なんですが(苦笑)、この登場人物たちは、皆さん清廉潔白で何一つ隠すことのない生活を送っていらっしゃるようで、羨ましい限りです(笑)。