赤×ピンク 桜庭一樹著 角川文庫 2008年

　初出は2003年、ファミ通文庫から出たものを出し直したもの。
　ネタばれあります、すみません；；

　東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる“女の子の格闘（キャット・ファイト）”。
　それぞれ衣装を着けて檻の中のリングで戦う「ショー」を見せる女の子。
　どこか壊れた、でも真摯で純な少女たち三人をメインに据えた連作短編集。

　File.１　“まゆ十四歳”の死体
　リングネーム「まゆ十四歳」、本名は高山真由、21歳。地方の高校を卒業してから東京の短大に通いOLになった…が会社を即辞めて、ひきこもって、今は、昼間はコンビニのバイト、夜は非合法ガールズファイトの選手としてひらひらのメイド服を着て檻の中に立っている。中学生になって弟ができるまで、ノイローゼ気味の母親に赤ちゃん用のフェンスに閉じ込められて育った真由は、檻の中にいると妙に安堵し、また絶望する。
　試合前、小学校の体育館「鮫島道場」で体をほぐしていると、ケッコンマニアの男が真由にプロポーズしてきた。誰彼構わずプロポーズすると言う彼は、その日、ショーの最中だと言うのに真由を檻の中から連れ出す。真由は彼との結婚を決意する。

　File.２　ミーコ、みんなのおもちゃ
　ミーコ女王様、19歳。日本人離れしたプロポーションを持つ彼女は、昼はSMクラブの女王様として働き、夜はガールズファイトでボンテージ衣装を着て戦っている。
　「人の望むこと」を敏感に察知し、その役割を果たしてしまうミーコ。対戦相手の真由がいきなり檻を出て行って以来、ミーコは落ち着かない。SMクラブの客でもある鮫島道場の師範代は、「わたしとあなたであの世界を造っていた」とふざけたことを言い始めるし、同僚で女嫌いの皐月は、ミーコ自身が好きなこと、やりたいことは何なのか訊いてくる。
　真由が去った後、新人・千夏との試合の中で、ミーコの何かが変わって来る。

　File.３　おかえりなさい、皐月
　天王寺皐月、19歳。空手でインターハイベスト４にまでなった実力者。何故かいきなり家出し、母親から「帰っていらっしゃい」と手紙を貰う日々。
　真由の「卒業」にショックを受け、皐月の部屋に転がり込むミーコ。女が苦手な皐月には迷惑この上ない。バイト先のレンタルDVD屋のオッサンは変なちょっかい掛けて来るし、道場に通う高校生・武史は師範代の性癖を知って狼狽えている。皐月の女嫌いを知ってからかってくる新人の安藤千夏は、リングで戦う楽しさを夫に理解して貰えない。
　ミーコはSMクラブのバイトを辞めることを決意。そのお別れ会にて、千夏は、皐月がずっと隠していたことを指摘する。…

　ラノベって凄いなぁ。こういう作品も内包するんだなぁ。
　アニメにも実写にも、多分できない。いや、映画には誰かがするかもしれないけど、違うものになるだろう。…しみじみそう思う作品でした。
　皐月の秘密は結構察しがつくんですが、女嫌いの理由が切なかった。誇り高くてどんな男より紳士。
　主人公三人とも、未来がほの明るいのが何となくほっとします。
　解説は山崎ナオコーラさん。…でもこれ、いらないんじゃないかなぁ。言わずもがなのことを書いているような気がする。…生意気言ってすみません；