読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ブラバン 津原泰水著 バジリコ株式会社 2006年

 ネタばれと言うか、かなり後ろまで粗筋書いてます、すみません;

 広島県立典則高校を卒業して25年、「僕」他片等はまた故郷に帰って赤字続きの酒場を経営している。
 折から一学年上の桜井ひとみ(トランペット)から連絡が入った。この秋の自分の結婚披露宴で、吹奏楽部の面々に演奏して欲しいと言う。三年で引退する前に転校してしまった彼女は、吹奏楽部に未練を残していた。彼女と共に母校へ楽器を借りに行ったり懐かしい面々と会ったりしているうち、他片は高校時代を回想する。
 先日事故死した皆元優香(バスクラリネット担当)は先輩二人、小日向隆一(トロンボーン)と君島秀嗣(アルトサクソフォン)を二股かけていたこと、その現場を目撃したばかりに他片はありもしない恋愛相談を皆元にする羽目になり、あらぬ誤解がクラブ中を駆け回ったこと。
 沖田小夜(クラリネット)は潔癖症の噂があったド近眼の美少女。今は結婚してニュージーランドに住んでいる。その沖田に心酔していたのがヤンキィの永倉竜太郎(クラリネット)、父親が脳卒中で倒れたため、高二で定時制へ移った。その後独力で大学へ進学、今は私立修林館高校の音楽教師。
 用賀大介(トランペット)。軽度のポリオで左手の自由が効かない。夏合宿で他片に星空を見せたり、女子風呂覗きに付き合わせたり。高校二年の文化祭の発表では他片の弦バスを改造、エレキ製にしてアンプを内蔵する。
 幾田(フルート)、唐木(ユーフォニウム)、来生(オーボエ)は小学校からの幼なじみ。幾田は繊細な一人っ子で今では引きこもり、唐木は女の子目当てで入部したフェミニスト、天才肌の来生は今は商社マンとして世界中を駆け回っている。
 偶然再会したのは一年時の顧問だった安野志保子。ジャズはやらない、と頑なに言い張る音楽教師。軽音と掛け持ちしている他片が気にくわないお堅い雰囲気だったのに、不倫の末妊娠して学校を一年で辞めた。今はどうやら来生と関係があるらしい。
 辻吉兵(テナーサックス)も軽音と吹奏楽部を掛け持ちしていたが、安野からは何も言われなかった。天性の舞台ミュージシャン、憧れの先輩。現在は事故で右手を失い、道後温泉の旅館で送迎をしている。三浦加奈子(バリトンサックス)と付き合っていたが、三浦の両親や姉妹が金銭トラブルにあい別れた。辻はまだ思いを残しているが、三浦は保母になり、結婚もしている。
 現在の典則高校吹奏楽部顧問・岸岡(ホルン)も加わっていよいよ練習に熱が入ってきた矢先、桜井の結婚式が取りやめになる。発表する場を失ったOB達。その年のクリスマス、典則高校講堂でささやかなコンサートを開く。…

 津原さんの作品を読むのは初めてです。
 …登場人物が多すぎて区別がつかん…;
 私に音楽の素養がないことが一番の敗因ですね。詳しい人なら名前の他、担当楽器ででも区別がついたのでしょうが、私は多数のキャラクターがごっちゃになって、とうとう最後まで「…あれ、これ誰だっけ」「どのエピソードの人だったっけ」を繰り返してしまいました; 例えば、小野不由美さんの『屍鬼』。あの作品は、あれだけの登場人物、最後にはほとんど覚えてたんですけどね。まぁ長さというか密度というか、全然内容違う作品ですが(笑)。
 曲名を書かれてもどんな音楽なのか思い浮かばないよ、ごめんなさい; 弦バスにアンプとマイクを内蔵して大音量で響かせ、みんなが「天使を見た」エピソードも、今一状況掴めなくて、「…きっと解る人には爆笑なんだろうなぁ」と遠い目をしたり(苦笑;)。
 作者の年齢からしてもおそらく自伝的内容ですよね。全てを作ったのではなく実在の先輩・後輩や同級生をモデルにしたんでしょうが、もうちょっと絞って貰えると有り難かった;
 …しかし後輩・柏木さんの「柏木回路」と名付けられた妄想癖、あれ小説風のラブレター書いたのが本当だとしたら、それ小説内でバラされた柏木さんのモデル、嫌な思いしてるだろうなぁ。書いてなかったとしても嫌だろうなぁ、みんなから「あんなの実は書いてたのか」って誤解されそうだし。
 ラスト近辺の桜井さんにはちょっとむっかりしました。自分の後始末は自分でしろよ、恥ずかし気もなく人に頼むんじゃねぇ。それでも環境省に勤めるエリートかよ、ぷんぷん。
 「十代の自分を振り返る大人の視線は手厳しく、今の自分を見つめる十代の頃の視線は残酷だ」…確かに。
 「バンドを再結成するのではなく、長く休んでいたことにする。そうすればすべてが未完の夢だ」…本当に(笑)。
 それにしても。前ローマ法王は本当に偉大な人だったんだなぁ。