読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

タイタンの妖女 カート・ヴォネガット・ジュニア著/浅倉久志訳 ハヤカワ文庫 1977年

 米国での出版は1957年。
 ネタばれあります、すみません;

 ウィンストン・ナイルス・ラムファードは愛犬カザックと共に、火星から二日の距離にある時間等曲率漏斗へ、自家用宇宙船で飛び込んでしまった。結果、現在ラムファードと愛犬は波動現象として存在している。その歪んだらせんが地球と交叉するときのみ地球に姿を現す。
 57日ぶりに自宅に現れたラムファードは相場師マラカイ・コンスタントを呼び出し、自分は過去も未来も見通す力を得たこと、コンスタントは自分の妻・ビアトリスと結ばれ、火星、水星を経ていずれ土星の衛星タイタンへ行く事を予言する。到底信じられないコンスタント。ビアトリスもそんな未来はとても受け入れられない。無駄とも言える抵抗をするが、結局二人とも一文無しになって火星に連れて行かれてしまう。
 そこには沢山の同胞がいた。地球襲撃のため、記憶も思考も奪われて時代遅れの武器で鍛錬する人間たち。コンスタントは何度も記憶を取り戻し、その度に病院送りにされて記憶を消され、ようやく得た親友ストーニィを自分の手で殺してしまう。何度目か自我を取り戻しかけたコンスタントは、隊長ボアズと共に宇宙船に乗り込み地球を襲おうとするが、どういう訳か宇宙船は水星へ。その頃地球では火星軍が全滅の憂き目にあっていた。
 水星で三年を過ごし、ボアズと別れて地球に戻ったコンスタント。ラムファードのお膳立てで救世主扱いされ祭り上げられるものの、やはりラムファードに自分が親友を殺害したことを指摘され、失意のうちに地球を離れる。宇宙船に同乗するビアトリスとその子供・クロノ。行く先はタイタン。
 タイタンで三人は瀕死のラムファードと、タイタンに長く漂着していたトラルファマドール星の機械人サロと会う。自分さえトラルファマドール星人に利用されていたことを悟り、絶望のまま消えていくラムファード。ビアトリスはそのままタイタンで一生を過ごし、クロノはタイタンに馴染む。コンスタントは最後に地球に戻ることを望み、サロはその希望を叶える。…

 「人間なんて所詮こんなもの」
 爆笑問題太田光氏が「読んで生きるのが随分楽になった」と話し、自身の事務所も「タイタン」と名付けた元となった作品。以前読んだ『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』で「…これはいわゆる『青春の蹉跌(笑)』とかに出会ってる若いうちに読んだ方がいい作家さんなのでは…;」とか思いつつ、とりあえずこれは読んどくか、と手に取りました。
 何か、キリスト教圏のお話だなぁ、と言うのが正直な感想。キリスト教の神様って、その人が耐えられる分の困難を与えるそうですね。でもラムファードに火星に連れてこられて人格奪われて地球人に殺されて、って困難も受け入れるの?? …う~ん、笑い飛ばせないなぁ。それこそ若いうちに読めば面白がれたかもしれませんが。ビアトリスの最終結論「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたら、それはだれにもなにごとにも利用されないことである」はもう開き直りと言うか悟りの境地と言うか…。だって、特にビアトリスは、自分で選んだ道じゃないのに。
 読み終わって何故か「おもしろうてやがて哀しき鵜飼かな」が頭に浮かびました。人間所詮鵜飼の鵜かぁ。鵜は鵜なりに生きがいや楽しみ見つけるしかないのね~。…確かに気は楽になるかな(笑)。