読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

愚かな薔薇 恩田陸著 徳間書店 2021年

 ネタばれあります、すみません;

14歳の少女高田奈智は、4年ぶりに磐座の地を訪れた。これから2カ月の間、親戚が経営する旅館で世話になりながら、昼間は磐座城周辺で行われる、あるキャンプに参加することになっている。事情をよく知らぬままこの地を訪れた奈智であったが、到着の翌朝、体の変調を感じ、激しく多量に吐血してしまう。
やがて奈智は、親戚の美影深志や同じキャンプに参加する天知雅樹らから、磐座でのキャンプの目的を聞くことになる。
それは、星々の世界――外海に旅立つ「虚ろ舟乗り」を育てることであった。
虚ろ舟の聖地である磐座に集められた少年少女たちは、徐々に体が変質し、やがて、歳をとらない体となる。食べ物もほとんどいらなくなり、心臓に銀の杭を打たない限り、死ぬことはない。
そのかわり変質体となると、一定期間、他人の血を飲まないと、死んでしまうという。
変質の過程で初めて他人の血を飲むことを、「血切り」と呼ぶ。
深志は奈智の血切りの相手は自分だと昔から決めていたと言うが、奈智は、他人の血を飲むなどという化け物じみた行為は嫌だと、思い悩む。そんなことなら、虚ろ舟乗りなんかに、なりたくない……と。
奈智の思いと裏腹に、「大人」になって行くキャンプ生たち。ことに結衣は、延命目当てに金を積んだ老政治家の血まで飲んで見せる。だが直後、結衣は木霊と呼ばれる狂乱状態になって老政治家を惨殺した。「虚ろ舟乗り」の先輩トワは、木霊は結衣一人だけではないという。
二か月近く続く祭りのクライマックス、三日間踊り続ける徹夜踊りが近付く中、白骨死体が発見される。それは行方不明になっていた奈智の父親だった。奈智の母を殺したとされていた父親だが、実際は母親に殺されていたらしい。トワはその真実と理由を語る。…     (出版社HP紹介文に付け足しました)

 連想したのはアーサー・C・クラーク幼年期の終わり』。…と思ってたら、萩尾望都さんが既に帯で言及されてましたね。これネタばれじゃないの?、いいの?(笑)。あと、キャンプ生の優遇処置とかは『僕の地球を守って』も思い出しました。
 面白かったです。多少じれったさはありつつ、残り少なくなっていくページ「これこの量で終われるの!?」とはらはらしました。「古来 宇宙船が飛来し…」みたいな、いわば散々使われた設定を、恩田さんが味付けするとこんな風になるんだなぁ。SFと和風ゴシックロマン、伝奇小説との融合。ネーミングも好きです、「虚ろ舟乗り」とか「血切り」とか。結局深志を選ぶんかい、って展開は意外でした。いや、達観した風の天知雅樹とかちょっとひねくれ気味の城田浩司とか、魅力的な人物は多数いたので。
 これ、モデルは郡上踊りなんでしょうか。一瞬奈良の方かな、との思いもよぎったんですが、本当に「天から舟が…」的な伝説があるのかな。ちょっと聖地巡礼してみたくなりました。
 そうそう、城田家に猪の首が置かれていた場面で、思わず「鬼滅の刃」を連想してしましたよ。結構影響受けてたんだなぁ。