読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

バレエダンサー~木曜日の子どもたち 上下巻  ルーマ・ゴッデン著/渡邊南都子訳 偕成社 1991年

 英国での出版は1984年。

 ロンドンの北、郊外の町プリグリムズグリーンで八百屋を営むペニー家に、待望の女の子が誕生した。4人の男の子の後に生まれた女の子、クリスタル。元劇場のダンサーだった母親・モーディは彼女に自分の夢を託し、あらゆる環境を整えてバレエを習わせる。金髪の巻毛すみれ色の瞳、美しい容姿に加えて踊る才能にまで恵まれたクリスタルは順調に伸びていく筈だった。だが、真実才能を持っていたのは2つ下の弟・デューンだった。
 ステージママとして忙しいモーディに、欲しいと思っていなかった末息子に注意を払う余裕はない。デューンは八百屋の手伝いをしていた元曲芸師のベッポーに育てられた。子守唄代わりにハーモニカを聞き、アクロバットを教わる。庭で遊んでいる二人を見たクリスタルは、自分もベッポーに宙返りを習おうとするが、怒ったモーディに止められ、反対にベッポーは家から追い出されてしまう。
 デューンの面倒を見てくれる人はいなくなった。困ったモーディは、クリスタルのバレエ教室にデューンを連れて行く。デューンは一目でバレエに魅せられる。
 デューンの才能はあらゆる人を魅了していく。バレエ教室でピアノを弾いていたミスタ・フィリックス、廊下で見よう見真似のバーレッスンをしていた彼を教えるミセス・シェリン。クリスタルがすっぽかしたバレエ衣装展覧会でであった「貴婦人」。プリグリムズグリーンで開かれたダンス・コンテストでデューンは見事にクラウンの代役を務め、クリスタルの鼻っ柱をへし折る。王室バレエ団の元プリマ・エニス=グリンは「デューンも一緒なら」と言う条件で、クリスタルを教える。
 踊りは踊れても、わがままで飽き性のクリスタルにバレエは向かない。エニス=グリンの言葉に反発したモーディは、彼女を王立バレエ学校に入学させる。
 鼻高々のクリスタル。しかし二年後、父親の反対を実力でねじ伏せ、兄弟やクラスメイトのいじめにも耐え抜いて、デューンも王立バレエ学校への入学を決める。ミスタ・フィリックスを喪った代わり、世界的ピアニストのリュッテ=フォン=ヘッセン男爵夫人と友達になって。自分が注目されないと気がすまないクリスタルの、苦悩がまた始まった。
 大抜擢されたデューンの耳に嘘を吹き込んで精神的ダメージを与えたり、お金のない我が家のためにバレエ学校を辞めるよう言ったり。発表会の創作バレエでのBGMテープを消すが、これが却ってクリスタル自身の首を絞める結果になる。審査員として来ていた世界的バレエダンサー・ユリ=コゾルスの前で、ピアノ伴奏のみで踊らなければならなくなったのだから。
 自分の視野の狭さに気付いたクリスタル。しかし性格がすぐよくなる筈はなく、やはりディーンには嫉妬してばかり。娘びいきのモーディは、クリスタルにユリ=コゾルスの特別レッスンを受けさせにスイスまで行かせようと、大切にしていたエメラルドの首飾りまで売ってしまう。だがクリスタルは、まだ屈辱に耐えねばならなかった。《くるみ割り人形》で主役クララに選ばれたのは、幼い頃からのライバル・ルースだった。…

 荻原規子さんがエッセイ『ファンタジーのDNA』で紹介していた作品。
 …何なんだ、この面白さは!? 
 上巻はデューン中心に話が進んで、『みにくいアヒルの子』や『にんじん』みたいなノリ。家族の誰にも振り向かれなかったディーンが、才能を開花させ、人脈を引き寄せていくくだりは爽快です。しかし、イギリスでもバレエやってる男の子は珍しいんだ。いじめられたりからかわれたりするんですね~。
 でも、下巻になると主役は完全にクリスタル。前半で悪役だった彼女が高すぎるプライドと自分の才能の間で折り合いをつけ、苦難を乗り越えて一人前のバレエダンサーになっていく。初めての失恋まで描いてみせて、本当、お見事。
 文章が所々分かり辛くて、どこが過去のシーンでどこが現在のエピソードかごっちゃになってしまったりもしたんですが、これは元々の文章がそうなのか、翻訳家さんの構成なのか…。でも物語の面白さでぐいぐい引っ張られました。
 表紙絵が早川司寿乃さん。…実は、これはちょっと微妙だなぁと思いました。綺麗です、綺麗なんですがバレエダンサーの絵、かなぁ。本文挿画は違う人が描かれているんですね。海外の挿絵みたいな雰囲気ですが、これもちょっと微妙。…いや、私の好みの問題だと思います、すみません;