読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

てるてるあした 加納朋子著 幻冬舎 2005年

 『ささらさや』の続編と言うか、番外編と言うか。
 ネタばれあります、すみません;

 お金にしまりのない両親が借金で夜逃げし、雨宮照代は遠い親戚の鈴木久代ばあさんに預けられることになった。地名も知らなかったど田舎まで訪ねて会った久代さんは、痩せてつけつけした物言いの、魔女みたいなおばあさん。ことあるごとに嫌な言い方で正論を吐く。庭で育てた野草を食卓に出し、編み物に精を出す。おまけに古い家には女の子の幽霊まで出てきた。
 近所に住むのは久代さんの幼馴染みの珠子ばあさん、お夏ばあさん。それにヤンママのエリカとその子供ダイキ。しょっちゅう集まって井戸端会議している。会議場になるのはサヤさんの家。一歳二ヶ月の男の子・ユウスケと暮らしている。サヤさんは頼りないけど能天気なほど優しくて、それが照代には鬱陶しい。
 前の家から持ってきたなけなしの宝物は、新しい生活の中で次々と壊れて行く。目覚まし時計、ガラスのリンゴ、中学の卒業証書に大切にしていたオルゴール。代わりに手に入れたのは修理しなおして貰った真っ赤な中古自転車、サボり癖のある友達。母親に誉めて貰うことを全ての基準に置いている幼い女の子・あゆかちゃんを見て、照代は自分が欲しかったのに与えられなかったものを自覚する。
 母親との唯一の連絡手段・携帯電話に時々くる差出人のわからないメール、未来を予知したかのようなメモ帳。幽霊の女の子はアルバムを散らかしたり夢に出てきたり、何かを伝えようとしている様子。久代さんは幽霊の正体を知っているらしいのに何も語らない。…

 今から本当にネタばれしますからね。
 途中でね、察しがつくんですよ、「あ、このおばあさん死ぬな」って。何度も繰り返す「いつまでも置いておけない」の言葉、真夏に編む冬用のセーター。ふぅん、と思いつつそれでも最後には泣いてしまいました。…う~ん、何か悔しい(笑)。
 大人になりきれない照代の母親。愛情は与えてもらった分しか分けられないのかな、例えそれがわが子でも。「親になる」と言う照代に、多分それがいいんだろうけど、でもいいのかな、と思ってしまう。親の分まで背負って大丈夫かな。いずれ巡り巡って照代にも分けてもらえるのかな。
 ラスト近辺にある「『頑張れ』という言葉が純粋な励ましとなるか否か。すべては自分次第なのだ、という気がする。」という文章は、確かにそうでしょうが、心に余裕がある人の意見ですね。私はやっぱり人に言えない。前向きに受け取れない人がかなりの確率でいるかもしれない、と言う言葉を人に投げかけるのは抵抗あるなぁ。前作『ささらさや』でも、サヤのあまりにあまりにもな頼りなさ加減に少しイラついたりしたんですよね(苦笑;)。加納さんの作品て、面白いんだけど、どうも私には素直に染み込んでこない気がする。…でも泣くんだよ(笑)。
 全体に流れる優しい雰囲気は相変わらず。少々個人的に引っかかる箇所はありましたが、安定して読めるお話でした。