読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

打ちのめされるようなすごい本 米原万里著 文藝春秋 2006年

 昨年亡くなったロシア語通訳者の著者が、その生涯で書いた書評文の全て。…でも坂口尚『石の花』は無かったなぁ、漫画は外してるのかな。
 紹介されている書物を楽しみにするより、米原さんの文章に触れることを嬉しく読みました。それでも、斎藤美奈子さんの本は読もう、と固く思いましたが。
 何しろ紹介される本の多くが外国の翻訳本、しかもロシアだのイラクだのドイツだの、英語圏の出版物より決してメジャーとはいえないものが多い。日本の作品でもチェチェン紛争イラク爆撃などを扱ったノンフィクションものとか、ソビエト崩壊後のロシアを描いたものとか、どうも私の狭い守備範囲を大きく超えていまして; それにね、米原さん内容まとめるの上手いんだよ。紹介文読んだだけで、あらかた満足できちゃうんだよ、罪なことに(笑)。
 こういうラインナップになったのは、多分「他の人が紹介しないものを」と思ったからでしょうね。貶すことより隠れた名作を知らせたい。それだけに本書に載ってる数少ないエンタテインメント系の作品は、確実に面白いんだろうなと思いました。奥田英朗桐野夏生高野和明etc. 恩田さんの『ドミノ』が絶賛されてたのが嬉しい。…でも私の中ではもっと面白い恩田作品あるんだけどな(笑)。何しろ一日七冊読めた人らしいので(!)、幅広く色々な本を読んでらっしゃったことでしょう。
 猫好き、犬好きの友人・知人に教えたい本もてんこ盛り(笑)。
 卵巣癌がわかってから癌関連の本を片っ端から読んで行く。ご本人は切除を拒否して色々な療法を試された訳ですが、でも、思ってしまう。もし早期に患部を摘出していたら。その後に、漢方でも温熱療法でも、免疫を上げる民間療法を試していたら。私は米原さんの作品は好きですが、医師にとって米原さんが、決して可愛い患者さんではなかっただろうな、とも察しがついてしまう。
 ご本人は小説が書きたくて、着々と準備を進められていたそうです。正直、小説家としてはどうだろう、と思わないでもない。以前お書きになった小説『オリガ・モリソヴナの反語法』は、文句無く面白かったのですが、でも、「お話」ではなくノンフィクションのような雰囲気でした。ロシアと言う日本ではマイナーな文化を持つ国を背景にしているせいか説明文がどうしてもくどくなってたし、そのサービス精神の為でしょうね、どうも余分とも思えるエピソードもあったし。でも、米原さんが一流のエッセイストであったことは間違いない事実です。惜しい人を亡くしたことには変わりありません。
 本当、残念だなぁ。もっと知らない世界のことを教えてほしかった。
 …余談ですが、中村方子著『ミミズのいる地球』紹介文の中で出てきた「ミミズのハンバーグ」で、『スケバン刑事』を思い出してしまいました。…懐かしい(笑)。