読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

秋葉原先留交番ゆうれい付き 西條奈加著 角川書店 2015年

 連作短編集。ネタばれになってるかも、すみません;

 東京奥多摩の稲香村駐在所勤務、顔はいいが頭は悪い警察官・向谷は、現地の村長の奥さんに手を出して謹慎を喰らい、秋葉原の先留駐在所預かりとなった。何故か足だけの幽霊・通称「足子さん」を連れて。
 「足子さん」の正体は渡井季穂、20歳。秋葉原メイド喫茶でクールビューティとして人気ナンバーワンを誇っていたが、気が付くと奥多摩で足だけの幽霊になっていた。
 意思の疎通もままならないまま、季穂は向谷と、先留交番勤務のオタク警官・権田と共に、秋葉原ならではの事件に遭遇することになる。
 フィギュアの盗難、メイドキャストへの抱きつき魔といったいかにもオタクがらみの犯罪から、一歩裏通りに入ると存在する日常、両親の離婚に絡んだ少年の迷子騒動。
 季穂が勤めていたメイド喫茶の同僚・酒井史央里の屈託が明らかになり、季穂殺害の真相が明かされるかと思いきや、いきなりそこにとある女性の影が浮かぶ。5年前、行方不明になってしまった季穂の母親だった。
 季穂の父親は所有欲の強い、束縛が酷い男だった。自分の仕事のストレスを、特に母親の一挙手一投足にケチをつけることで晴らし、母親を追い詰めた。季穂の兄は遠方の優秀な大学へ行くことで円満に家を出たが、それで一層季穂への父親の過干渉は増し、希望進路も阻害され、季穂も家出を決意。人に紛れる大都会東京秋葉原の、メイド喫茶で働いていた。
 では、季穂を奥多摩まで運んだのは母親なのか。妹を心配してきた兄の協力もあって、季穂たちは母親の現在の居場所を突き止める。季穂が足だけの幽霊になってしまった経緯とは。…


 後半は一気に読めました。季穂の過去が明らかになるあたりから本当にスピード上がりました。この父親何とかならないのかなぁ、一緒に生活していない期間が長かったら、離婚認められるんじゃなかったっけ。ただ、これは父親だけではなく、例えば母親の過干渉とかでも実際にある境遇なんでしょうけど。
 でも前半がなかなか進まなくてですね、何しろ季穂のキャラクターに可愛げがない(苦笑;)。まぁ影のあるクールビューティなんだから仕方ないんですが、とにかくオタク全般への見る目が厳しくて嫌悪感丸出しで(苦笑;)、私自身おたくなこともあって、ちょっと首をすくめました。とか言いながら、1年7か月かかってのメイド喫茶の存在意義への理解には、なるほど、と思いましたけど。

 一歩外に出れば、厳しい社会が待っている。仕事、学業、人間関係――自由という名の絶え間ない競争にさらされて、自分の尊厳は日々削られていく。

 という文章はちょっと身につまされました。
 これ、シリーズ化するのかなぁ。いかにもそれを狙ってるような終わり方で、それはちょっと眉を顰めました。