読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

宝石商リチャードの謎鑑定【9】 邂逅の珊瑚(サーンウー) 辻村七子著 集英社オレンジ文庫 2019年

 シリーズ9冊目。ネタばれになってるかも、すみません;

 滞在していたスリランカ戒厳令発令を受け、ニューヨーク経由で日本に一時帰国する正義。久しぶりにあう大学の友人や先輩は正義の「宝石商見習い」の立場をやっかみ、リチャードとの関係を「愛人」と揶揄。思ってもいなかった悪意にさらされて呼吸困難にまで陥る正義が落ち着けたのは、リチャードとの通話だった。
 母親ひろみと義父の中田と会って、正義は香港へ飛ぶ。ヴィンセントがそこにいるだろう、とヴィンセントの妻マリアンから情報を得ていたから。マリアンはヴィンセントがリチャードを裏切ることになった経緯を、ヴィンセントと父親の関係や自分の病気まで含めて正義に話していた。
 ヴィンセントととの対話の後、モニカを通じて正義はシャウルさんと会い、今度はシャウルさんの過去、宗教遍歴を聞く。再び日本へ、今は岡山で教師をしている谷本さんと旧交を温め、今度こそ友人となる。
 そしてスリランカへ。正義の代わりに仕事をこなしていたリチャードは、折も折、元恋人のデボラの離婚を聞いた所だった。沈むリチャードをスイーツとオムライスで支える正義。ジェフリーからは、オクタヴィアがスリランカに向かったとの連絡が入る。…

 今までの答え合わせのような1冊。
 事件という事件に巻き込まれる訳でもなく、各人の今までとこれからが語られ、リチャードと正義の関係も新たになる…というか、正義が自分の感情、自分にとってのリチャードの存在の大きさを自覚しました。バウムクーヘンエンドを自分で切り出して涙が止まらない描写は、それを見守るリチャードを含めて、綺麗としか言いようがない。
 そこにいる間だけは幸せになれる桃源郷を作りたかったリチャード。ああ、でも、ある程度金銭要るよねぇ。(←おいおい;)
 個人的には、モニカが幸せそうでよかった。
 次巻はオクタヴィアの生い立ちから始まりそうです。