読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

天使のナイフ 薬丸岳著 講談社 2005年

 第51回江戸川乱歩賞受賞作。

 桧山貴志は四年前、妻・祥子を殺された。犯人は中学一年生の少年三人組。犯人達は少年法に守られ、罪に問われる事はない。少年達への恨みを抱きつつ、桧山は妻が最後まで庇い続けた娘の愛実を育てていた。ある日、刑事が桧山を訪ねてやって来る。三人のうちの一人、沢村和也が近くの公園で殺されたらしい。アリバイもなく、疑われる桧山。少年達は本当に改悛したのか、桧山は沢村の入っていた施設を訪れ、残る二人・八木将彦や丸山純とも会おうとする。八木は沢村を殺したのは桧山だと思い込み、逃げ回るばかり。ようやく会う約束を取り付けるが、八木も何者かに殺されてしまう。
 桧山に、過去の事件に捕らわれるなと願い出る祥子の友人・保育士の早川みゆき、加害少年の立場を擁護する人権派の弁護士・相沢秀樹、元法務教官だったライター・貫井哲郎、祥子と境遇が似ている高校生バイト・仁科歩美。事件には、どうやら桧山の知らない祥子の過去も関わっているらしい。いつも憂いを帯びていた祥子の瞳は、何を秘めていたのか。桧山はそれを知ってもいいのか。…

 事件の加害者・被害者、それぞれの家族。全てに言及した、って所がすごい。今できる精一杯を書きました、って感じがしました。それにしても偶然とは言え、当事者がこんなに一同に会するとは。
 とある事件の加害者が長じて弁護士になって高収入得てて、反対にその被害者が精神的ケアも受けられないまま汲々と暮らしている、って言うのは実際にあると聞いたことがあります。更正って何をもって更正とするのか難しいところです。どんでん返し含めてちゃんと推理小説にもなってて、とても面白かった。…んですが。
 今回テーマや何かと別の所で気になった事が一つ。…看護師目指して学費稼ぎに励んでる十代の女の子と、できちゃった婚する28歳の男ってどうよ。ちゃんと避妊しろよと言ってしまうわ。その女の子の夢を摘んだって事に気がついてるのかなぁ。子育ての合間に目指すには、かなり難しい夢でしょうに。…いや、話には関係ないことなんですけどね、すみません。